「石塚弁護士ブログ」カテゴリーアーカイブ

(調停)離婚後の手続4 子供の氏と戸籍について

調停離婚後の手続の説明も,今回で一区切りです。

とはいえ,今回のお話も調停離婚に限りません。

協議離婚を含めて離婚手続き全般にいえることですので,そのことを念頭に入れてください。

Q 離婚によって復氏したのですが,私が新権を有する子供の氏も離婚によって当然に私と同じ氏になるのでしょうか。

A 新権を有する子の氏であっても,離婚によって当然に自分と同じ氏を名乗らせることはできません。

(調停)離婚後の手続3でもご説明したように,婚姻によって氏を変えた人は,離婚によって婚姻前の氏に戻ることになります(復氏)。

しかし,復氏の効果は,子供には及びません。

したがって,復氏によって,子供の氏と異なる氏になることがあります。

これは親権者であっても同様で,親権者の氏と未成年者の氏とが異なるということもありうるのです。

 

Q2 離婚後も子供と同じ氏を名乗りたいのですが,どうしたらよいですか。

A2 親の氏を子供の氏に合わせるために,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出するか,子供の氏を親の氏に合わせるために,「氏の変更許可の申立」と「入籍手続」をとる方法があります。

親は復氏をしないで,婚姻時の氏を名乗ることもできますが,そのためには,離婚の日から3ヶ月以内に,本籍地又は届出人の所在地の役所に,離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出する必要があります(詳しくは,(調停)離婚後の手続3を参照)。

また,子の氏を親の氏に変更することもできますが,そのためには,氏の変更許可の申立と後に述べる入籍手続をとる必要があります。

いずれの方法が良いのかはケースバイケースでしょうが,手続きの簡便さと,子供への影響を避けるために,親が婚姻時の氏を称する方を選択される方が多いように感じます。

なお,子供の氏を変更する場合においても,就学中の子供に辛い思いをさせないために,学校内では以前の氏のままで呼称してもらうように,学校に配慮してもらうようにお願いする方もいらっしゃいます。

また,子供が小学校から中学校,中学校から高校へと進学するタイミングで,子の氏の変更を申し立てることもあるようです。

 

Q3 離婚後に,親権を有する子の戸籍はそのままなのですか。離婚によって,親権者である私の新しい戸籍に入るのですか。

A3 親が離婚をしても子供の戸籍に影響はありません。そのため,親権者である親の戸籍と親権に服する子供の戸籍とが別になることが生じます。子供を新しい戸籍に入れるには,入籍の手続が必要です。

実はこの質問は,私の経験からして,非常に多いと感じています。

多くの方が,親権者と親権に服する子との戸籍が別になることに違和感を感じられるのでしょう。

また,違う戸籍になること,つまり,元夫(妻)の戸籍のままに子供がいることに不安を感じ,違う戸籍のままだと,相続等で問題が生じないかと心配されるのでしょう。

違う戸籍だからといって,親権の行使や相続に法的な違いはありませんので,そのような心配は無用です。

もっとも,公的機関等に親子関係を証明するために,戸籍謄本を提出することがありますが,その際に,複数の戸籍を用意しなければならないという煩わしさはあるといえます。

このような煩わしさを避けるため,また,別れた夫(妻)の戸籍のままにあるのが嫌だという感情的な理由から,自分の戸籍に子供を入れたいと思う方も少なくないようですが,そのためには,入籍の手続を取る必要があります。

 

Q4 入籍手続はどうしたらいいのですか。

A4 親の氏に合わせるために氏の変更許可の申立をした場合は,氏変更許可の審判書をもって,届け人(15歳未満の子の場合は親権者)の所在地又は本籍地の役所に,入籍届を提出する必要があります。子の氏に合わせるために離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出した場合は,前記役所に,入籍届を提出すれば足ります。

親の氏に合わせるために氏の変更許可の申立をした場合,氏の変更許可のみでは氏の変更の効果は生じず,子が親の戸籍に入籍する手続をとる必要があります。

入籍の手続が完了して氏の変更が完了するわけです。

そのため,入籍手続において,氏変更許可の審判書が必要となります。

これに対して,親が離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出した場合には,氏変更許可の審判書は当然のことながら不要となります。

(調停)離婚後の手続3 婚姻時の氏を名乗る場合

今回も調停離婚後の手続についてご説明します。

もっとも,今回のお話は調停離婚に限りません。

協議離婚を含めて離婚手続き全般にいえることですので,そのことを念頭に入れてください。

 

Q 離婚後も婚姻前の氏(旧姓)ではなく,婚姻時の氏を名乗りたいのですが,どうしたらよいですか。

A 離婚の日から3ヶ月以内に,本籍地又は届出人の所在地の役所に,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出してください。

婚姻時に氏を改めた人が離婚をすると,婚姻前の氏に戻ることになります(復氏)。

しかし,婚姻期間が長いと,婚姻時の氏で活動している期間が長いため,復氏をすると不都合が生じることは少なくありません。

また,お子さんがいらっしゃる場合,離婚を理由にお子さんの氏を当然に変更することはできません。

このことは,お子さんの親権者になる方が復氏する場合も同様です。

そのため,お子さんと同じ氏を名乗るために,婚姻時の氏を名乗りたいと思う方も結構いらっしゃいます。

このように,婚姻時の氏を名乗りたいと思う場合には,離婚の日から「3ヶ月以内に」,本籍地又は届出人の所在地の役所に,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出してください。

離婚届を提出するのと同時に,この離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出されるとよいでしょう。

なお,これが「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」です。柏市で離婚届を取り寄せると,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」もセットでもらえます(他の市町村も同様の扱いをしているかはわかりませんので,問い合わせをされるとよいでしょう)。

 

 

Q2 離婚後3ヶ月を超えたら,婚姻時の氏を名乗ることはできないのでしょうか。

A2 家庭裁判所に対して,氏の変更許可の申立をすることができます。

前述の離婚のときに称していた氏を称する旨の届は,離婚成立日から3ヶ月以内という期間制限がありますので,3ヶ月を過ぎると,同届け出はできなくなります。

しかしながら,3ヶ月を過ぎたら,婚姻時の氏を名乗る手段が全くなくなるということはありません。

氏の変更許可の申立という手段があります。

そのため,3ヶ月を過ぎた場合には,家庭裁判所に対して,氏の変更許可の申立をすることで,婚姻時の氏を名乗ることができます。

もっとも,氏の変更許可の申立は,申し立てたら当然に氏の変更が認められるわけではありません。

氏の変更について「やむを得ない事由」がなければならないとされています。

復氏した方が婚姻時の氏を名乗るために氏の変更許可の申立をする場合には,やむを得ない事由が認められやすいとは言われておりますが,当然に氏の変更が認められるわけではないので,注意が必要です。

したがいまして,離婚後3ヶ月を経過しても,いつでも氏の変更ができると

思うことなく,できる限り離婚後3ヶ月以内に,離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出するようにしてください。

調停離婚後の手続2 調停離婚成立後の年金分割について

前回の「調停離婚後の手続1 調停離婚成立後の離婚届について」に続いて,今回も調停離婚成立後の手続についてご説明します。今回は,調停離婚成立後の年金分割についてです。

前提として,年金分割の基礎知識から確認しましょう。

Q1 年金分割とはなんですか。

A1 年金分割とは,いわば年金の納付実績を半分に分けることをいいます。

夫(妻)の給料から厚生年金が支払われるため,外形的には夫(妻)が年金を支払っていて,その扶養家族である妻(夫)は年金を支払っていないようにみえます。しかし,そもそも夫(妻)がその年金を支払えたのは,妻(夫)が家事等をしていたからなのであり,その支払っている年金の相当分は,実質的には妻(夫)が支払っていると評価できるので,夫(妻)が支払っていた年金実績を,離婚時に妻(夫)にも分けるよう請求する制度,これが年金分割です。

 

Q2 年金分割にいう,合意分割と3号分割の違いは何ですか。

A2 合意分割は合意によって分割の割合を決める年金分割の方法をいいます。3号分割は合意によらずに,年金分割を求める者の請求のみで,当然に分割の割合が5:5と決まる年金分割の方法をいいます。

合意分割は「合意」で分割の割合を「(上限はありますが)自由に決めることができます」。しかし,3号分割は「一方当事者の請求」で足りるのですが,分割の割合を自由に決めることができず,「当然に分割割合は5:5」に決まります。もっとも,合意分割における分割の割合も殆ど「5:5」で決まることが多いので,その違いはあまりないといえるでしょう。

それぞれの年金分割が認められるための要件は,当ホームページの弁護士が教える離婚について知っておきたい基礎知識中の熟年離婚の項目(https://ishizuka-law.jp/rikon/jukunen/)を参照していただきたいと思います。

ただ,調停離婚で問題となるのは,通常は,合意分割です。3号分割が可能であれば,調停によることなく,分割請求をすれば足りるからです。

年金分割自体の説明は,以上のとおりです。

次に,本題の調停離婚後の年金分割の手続を説明します。

 

Q3 調停で年金分割について合意したのですが,これで手続は終了ですか。

A3 いいえ,年金事務所等で年金分割の請求をして下さい。

調停で年金分割について話し合い,調停調書に年金分割の割合を定めた条項を入れても,これで年金分割の手続が終了したことにはなりません。年金事務所など(厚生年金の手続きを取り扱う役所・機関)で年金分割の請求をして下さい。

 

Q4 年金事務所には,相手方当事者と一緒に行かなくてはいけませんか。

A4 調停調書謄本(調停調書省略謄本)があれば,独りでも大丈夫です。

合意分割の場合は,原則当事者双方が年金事務所等に行かなくてはなりません。しかし,調停で年金分割について話し合い,調停条項に年金分割の割合を定めた場合,調停調書謄本(調停調書省略謄本)があれば,独りで手続をすることができます。

その他に,年金手帳や分割当事者が婚姻関係にあったことを示す戸籍謄本も必要となります。

 

Q5 年金事務所に行くのは,どちらの当事者ですか。

A5 決まりはありませんが,通常は年金分割を請求する者となるでしょう。

年金分割を請求する者が年金事務所に行くので,年金分割を請求する者は,調停成立時に,調停調書謄本(調停調書省略謄本)の交付ないし郵送の手続をとる必要があります。家事事件における調停調書は,判決書謄本とは異なり,当然には交付ないし郵送されませんので,年金分割を請求する者は,自ら交付ないし郵送の手続をとるように注意して下さい。

もっとも,通常は,家庭裁判所の書記官が,交付ないし郵送の手続をしますかと尋ねてくるので,調停調書謄本(調停調書省略謄本)を取得し忘れることは少ないかもしれません。

 

Q6 年金事務所に行くのは,いつでもいいのですか。

A6 年金分割請求は,離婚成立日から2年間の間にする必要があります。もっとも,離婚前の配偶者が死んでしまうと,(離婚成立日から2年経たなくとも,)同人が死亡してから1ヶ月以内に請求しなければなりません。

年金分割請求には2年という時効期間がありますので,間違いなく,離婚が成立してから2年間の間に年金分割請求をする必要があります。

もっとも,離婚前の配偶者が死んでしまうと,離婚から2年を待たずに,死亡から1ヶ月が期限となります。死亡の事実を知らなくても,関係ありません。ですから,2年間の間に年金分割を請求すれば足りると思わずに,離婚が成立したら,すみやかに年金分割請求をして下さい。

調停離婚後の手続1 調停離婚成立後の離婚届について

離婚調停事件を代理するときに,よく質問されることの1つに,離婚調停が成立した後どうしたらいいですか?というものがあります。

当ホームページでは,こちらのページの下段にある,「弁護士が教える離婚について知っておきたい基礎知識」の9つの項目において,離婚に関する事項を,かなり詳しく説明していますが,離婚後の手続については,それほど触れていないので,これからしばらくの間,連載という形で説明していきたいと思います。

今回は,「調停離婚後の手続1 調停離婚成立後の離婚届について」を説明したいと思います。

まず,前提のお話しから。

Q1 離婚調停が成立したとして,離婚が成立するのはいつでしょうか。

A1 合意内容によりますが,通常は調停が成立した日が離婚が成立した日です。

よくある合意内容である,「申立人と相手方は,(相手方の申し出により)本日,調停離婚をする。」と調停調書に定められたなら,離婚調停が成立した日に離婚が成立することになります。その後に,離婚届を届出ることになりますが,それは報告的届出といい,離婚の成立には影響しません。

まれに,調停の場で離婚届を作成した上,「申立人または相手方の一方が責任をもって離婚届を役所に届出る」という合意をした場合には,離婚届を役所に届出して受理されたときに離婚が成立します。

前者によるとき,戸籍に「離婚の調停成立日」と記載されるため,戸籍から調停離婚であるとわかるようになります。それを嫌う場合に,後者の合意をすることもあります。しかし,後者によると,提出義務者が離婚届を届出ないかぎり,離婚が成立しません。そのようなリスクを抱えた合意は望ましくないので,後者の合意をすることは稀といえるでしょう。

したがって,合意内容にはよりますが,実際には,前者の合意が交わされるので,離婚調停が成立した日に離婚が成立するといっていいでしょう。以下も,前者の合意が交わされたことを前提にお話しを進めたいと思います。

 

Q2 調停離婚が成立したら,離婚届を届出なくてもいいのでしょうか。

A2 離婚届を届出なければなりません

しかも,離婚が成立してから10日以内に離婚届を市区町村に届出なければなりません。仮に,10日以内に離婚届を届出なければ,(状況次第では)過料という,金銭的な制裁を科されることもあります。

10日もあれば充分だ,と思われるかもしれませんが,実際には,この期間はかなり短いといえます。

なぜなら,離婚届と一緒に提出する,「調停調書謄本」を手にするのに数日かかるのが一般だからです。調停証書は調停成立後に,裁判所の書記官が作成するので,調停成立時に調停証書謄本を受け取れるわけではありません。そして,調停調書謄本を郵送してもらうときには,郵送にかかる日数分,受取りが遅くなります。

また,離婚届を本籍地のある市区町村に届出れば問題ありませんが,本籍地が遠方にある等の理由から,本籍地以外の近隣の市区町村に届出をする場合,戸籍謄本を提出しなければなりません。この戸籍謄本を離婚後に郵送で取り寄せようとすると,取り寄せるまでの間,離婚届を届出ることができないことになります。

したがって,10日以内という期間は,思っている以上に短いのです。

もっとも,こうした事情は,市区町村の職員もわかっているので,多少遅れても,事情を説明すれば,問題なく受け取ってくれることが多いとは思います。上記に,(状況次第では)と書いたのは,そのためです。

 

Q3 離婚届には,他方の署名や証人の署名が必要なのでしょうか。

A3 調停離婚後に提出する離婚届には,届出をする者の署名のみで足り,他方の署名や証人の署名は不要です。

他方の署名や証人の署名がなくとも,調停調書謄本により,離婚が成立したことが明らかなので,これらの署名は不要なのです。

 

Q4 離婚届は,離婚調停の申立人,相手方,いずれが提出するのですか?

A4 離婚届をいずれが提出するかは,調停調書の記載によります。

具体的には,「申立人と相手方は,本日,調停離婚をする。」と記載された場合には,申立人が届出をし,「申立人と相手方は,本日,相手方の申し出により,調停離婚をする。」と記載された場合には,相手方が届出をすることになります。

ですから,調停調書の内容を取り決めるときには,自分が離婚届を届出る義務を負うのかを意識して取り決める必要があります。

一般には,婚姻時に姓を変えて相手方の戸籍に入った方が離婚届を届出る義務を負うことが多いです。これは,婚姻時に姓を変えて相手方の戸籍に入った者は,離婚後の戸籍として,旧戸籍(例えば,両親の戸籍)か,新戸籍(新たに作成する自分の戸籍)かを選択することができるところ,離婚後の用紙に,その選択結果を記載しなければならないので,婚姻時に姓を変えて相手方の戸籍に入った者が離婚届を記載し,届出た方が,その選択結果を正確に離婚届に反映させることができるからです。相手方に任せてしまうと,自分の選択とは異なる戸籍に入ってしまうおそれがあります。

 

Q5 離婚届を届出る義務を負う者が,離婚届を届けなかった場合,離婚の成立は無効になるのですか。

A5 離婚届を届出なくても,離婚の成立は無効になりません。

前述のように,調停の成立日に離婚は成立しており,離婚届は離婚の成否には影響がありません。離婚届を届出る義務を負う者が離婚届を届出ない場合,他方の者が離婚届を届出ることもできるようになります。

NHKの受信料問題

もう去年のことになるのでしょうか,平成29年12月6日に,受信設備を設置した人はNHKと受信契約を締結しなければならないとする規定,放送法64条1項を合憲とする最高裁判決が出ました。

同判決により,受信設備を設置している人は,NHKから裁判をされれば,受信契約を締結しなければならなくなり,そして,同契約の締結は,判決日からではなく,受信設備を設置した日からとなるため,受信設備を設置した日からの受信料を支払わなければならないことになりました。

そのため,受信設備を設置したのが10年前,20年前なら,10年分,20年分の受信料を請求される恐れが出てきたのです。

同判決によって,NHKが,過去分を含めて,高額な受信料を積極的に請求してくるのではないかと危惧されております。確かに,受信料を払って下さい,支払わないなら,裁判をすることもありますよといわれれば,今までと違い,支払に応じる人も出てくるでしょうから,その可能性は低くないでしょう。

もっとも,本当に10年分,20年分の受信料を支払わなければならないのでしょうか?

答えはノーです。

NHKの受信料の消滅時効期間は5年ですから,5年を超えて受信料を求められた場合には,消滅時効を援用することで,支払わなければならない受信料を減額させることができます。

なお,NHKは,消滅時効期間が5年であることは当然に知っていますが,同期間を超えて,設置日からの受信料を請求してきます。

ですから,10年前,20年前といった,随分前の受信料の支払いを請求されたときには,慌てないで,消滅時効を援用できないか,弁護士に相談して下さい。

 

突然,ブログでNHKの受信料を話題にしたのは,弊事務所においても,まさにNHKから高額な受信料の支払いを求められ,これを時効援用で減額したという事案があったので,一言書き留めておきたいなと思ったからです。

 

千葉家庭裁判所佐倉支部に行って来ました

佐倉支部の新館(地裁・簡裁)

佐倉支部の本館(家裁)

佐倉支部に行ったのは今回が初めてではなく,実は何回も行っています。佐倉支部管轄の事件も意外にあるのです。

佐倉支部は小高い丘の中腹にあるため,電車で行くと,京成線の佐倉駅から坂道をしばらく登らなくてはなりません。

佐倉支部に限らず,裁判所は小高い場所にあることが少なくないんです。(ホームグランドである)松戸支部も小高い場所にありますし,福島県だといわき支部も小高い場所にあります。

城跡や旧日本軍の施設跡地に,裁判所が建てられたことが少なくなかったことが原因ではないかと,勝手に推測しております。

佐倉支部は,佐倉城の城主土井利勝が建てた松林寺や,佐倉城の鎮守麻賀多神社や,旧佐倉藩校(佐倉高等学校)の近くにあるので,「なんか」関係しているのではないかなとか思いながら,いつもテクテク坂を登っております。

求む,矜持に頼らない制度設計

私も国選弁護人となって刑事事件に関わることがあります。国選弁護人とは資力のない人等のために国が選任した弁護人のことをいいます。これに対して,被疑者又は被告人が選任した弁護人を私選弁護人といいます。

これも弁護士あるあるだと思いますが,本人又は関係者からよく「国選弁護人よりも私選弁護人を頼んだほうがいいですか」と尋ねられることがあります。国選弁護人は弁護士報酬が低いため,しっかり弁護をしてくれないのではないかという不安があるのでしょう。

この質問を受けたとき,私は,「国選だろうと私選だろうとするべきことに変わりはありません。私は国選だからといって手を抜くことはしませんが,弁護士もいろいろなので,弁護士によっては熱心でない人もいるかもしれませんね。」と答えることが多いです。自分は違うと言いながら,他の同業者を疑問形とはいえおとすので,やや卑怯な感じがするのですが,いろいろ噂を聞きますと,正直な感想なので仕方ないというか,許していただきたいなと思います。同業者の皆さんはなんて答えるんでしょう,今度聞いてみたい気がします。

さて,国選弁護人は,前述のように基本的に資力のない人を対象にするのですが,中には,資力の全くないホームレスを対象にした事件を扱うことがあります。よくあるのが,生活が苦しくて万引きをして捕まったというものです。

万引きはお店にとっては本当に許しがたい犯罪ですが,前科がなかったり万引きした物の価値が僅少であった場合,不起訴なり執行猶予なりで,早期に釈放されることが多いといえます。ただ,何もケアせずに社会に復帰させると,また生活苦を理由に万引きしてしまう危険があるので,ホームレスによる万引き事案では,こういった被疑者(被告人)の今後をどうケアしたらいいのかが問題となります。

一般論からすれば,生活保護を受給してもらい,生活を立て直してもらうことになります。ただ,生活保護は,申請してから受給までに2週間以上かかりますので,受給までの生活保障をどう確保するかが問題となります。一般論といったのは,中には,あくまでも自由な生活を望む人がいるので,そうそう杓子定規に生活保護を受ければいいとはならないからです。検察官も市の職員もそのことがわからないので,時として弁護人は,本人の意向と検察官等の意向とで板ばさみになるのですが,その問題は今回は触れないでおきます。

受給までの生活保障を確保するには,いくつか方法があります。具体的には,更生緊急保護の制度を利用する,市町村の生活困窮者支援事業を利用する,NPO法人のシェルター(施設)を利用する等があります。細かな違いはありますが,これらの制度,団体は,いずれも(要件を満たせば),金銭の給与又は貸与,宿泊場所の供与をしてくれますので,受給までの生活保障を確保できます。

柏市であれば,あいねっとが生活困窮者支援事業を行っています。千葉でシェルターを用意してくれるNPO法人には,エスエスエス,グループハウス金木犀,市川がんばの会などがあります。

ここまで読んでいただいて,皆さんは,しっかりとケアする制度,施設があるのなら,問題ないねと思われるのではないでしょうか。

しかし,いずれの制度も,実際にホームレスの被疑者(被告人)を各施設に入所させる手続を誰がするのか,その費用を誰が負担するのかという視点が抜けています。

松戸警察署に留置されていたホームレスの被疑者が,勾留満期で釈放されるケースを考えてみましょう。

更生緊急保護を利用することを選んだとします。この場合,まず被疑者(本人)を松戸警察署から千葉市にある保護観察所に連れていく必要があります。そこで受付を済ませ,次に,委託先の施設まで再び本人を連れて行く必要があります。がんばの会も保護観察所からの委託を受けて運営していますので,同会に連れて行く場合は,松戸警察署から千葉市の保護観察所,同所から市川のがんばの会に行く必要があります。さらにいえば,同会を利用するには,事前にがんばの会の職員の方による面接が必要なので,がんばの会の職員の方と日程調整の上,一緒に接見に行く必要もあります。

グループハウス金木犀を利用することを選んだとします。この場合も,事前に金木犀に施設に空きがあるかを確認しておく必要があります。そして,釈放されると,本人を空きのある施設に連れて行きます。そこで,受付をすれば,入所は完了となりますが,金木犀の利用は,生活保護の受給申請は同行者がすることが前提なので,入所手続とは別に,同行者は,本人を市役所に連れて行き,生活保護の受給申請に協力する必要があります。

このように,いずれの方法によったとしても,実際にホームレスの被疑者(被告人)を各施設に入所させる等の手続をする人間が必要なのですが,各制度はこの担い手について,何ら規定しておりません。その費用負担についても同様です。

実際には,弁護人がこれを行っています。先のがんばの会を利用する場合,釈放日は半日から1日つぶれることになります。そして移動にかかる交通費は全て弁護人が負担することになります。更にいえば,がんばの会の職員の方の接見にあたって,日当と交通費も弁護人が支払うことになります。この費用は,後日弁護士会に請求すれば戻ってきますが,それも,元を辿れば自分が支払った弁護士会費から支払われているわけですから,結局自分が負担をしているようなものです。

ラーメン屋さんはラーメンを売って生活をしているわけですが,あるとき,見ず知らずの人のために店を閉めて欲しい,そしてその人が各所に行くのに同行して欲しい,交通費がかかるけれど,それは自腹で払ってほしいと言われて,そのラーメン屋さんはわかったというでしょうか。(ラーメン屋さんを出したのは,弁護士と同じく主に労務所得で生活をしているからであり,特段意味はありません。)

ところが,弁護士は(表面的には)文句を言わず,自腹を切りながらホームレスの被疑者(被告人)のために,手続を行うのです。その理由は,他にする人がいないから仕方ないと思っているのか,はたまた弁護士としての矜持なのか・・・・。

ただ,やはり矜持に頼った制度設計は間違っていると思います。私は,本来はこれらの手続は行政の仕事であり,個人たる弁護士に手続を行わせるのはおかしいと思いますが,仮に弁護士に手続を行わせるのであれば,それに見合う対価を国選の報酬として定めるべきです。

不十分な対価しか払われていないことが,私選の弁護人の方が良いのではという先の質問に繋がるのであれば,国選弁護制度を利用する国民にとっても不幸なのではないかと思う次第です。

おかげさまで1周年(追補)

1周年ということで,友人からいただきました。

相談者を装って来所して来たので,びっくりしました。

(来所方法もさることながら,1991年蒸留のお酒を用意するとか,事務所内でカップ焼きそばを食べようとするとか,色々小技を利かせてくるところが,らしいなと思いましたよ。)

友人にも感謝感謝の1年でした。ありがとう。

おかげさまで1周年

本年2月1日を持ちまして,弊事務所も開業してから1年が経ちました。つまり,1周年ということになります。

開業といいましても,昨年の2月1日の頃は,まだまだ事務所の体をなしていませんでした。

相談室のパーテーションが出来たのは2月下旬であり,当初はガランとした部屋に相談用のテーブルと椅子がちょこんとあるだけでした。2月上旬に相談に来られた方は随分とがらんとした事務所だなと思われたのではないでしょうか。

また,入口の看板が出来たのは4月下旬であり,看板が出来る前は,相談者の方が事務所の前を右往左往してしまい,それを私が事務所はこちらで間違いありませんと呼び止める,ということがしばしばありました。

さらに,今では大きな観葉植物が6つありますが,これも5月頃に購入したものですし,傘立てにいたっては,梅雨入後に購入したと記憶しております。

2月上旬にご依頼いただいた方が,相談に訪れる度に,「お~随分事務所ぽくなりましたねぇ」とおっしゃり,事務所の体をなした7月頃に事件が解決し,「先生のところに来てよかったなぁ」と嬉しそうにおっしゃって去られたときには,本当に地元の柏市で開業してよかったと思ったものでした。

大変忙しかった1年でしたが,あらためて考えますと,柏市およびその周辺にお住まいの方々と企業様に支えられて過ごすことができた1年だったなと,感謝に絶えません。

今後も,柏市およびその周辺にお住まいの市民の皆様と企業様に支えていただきながら,良質な法的サービスを提供することで,地元柏市およびその周辺にお住まいの市民の皆様と企業様に貢献していきたいと思います。

2年目も,石塚総合法律事務所をどうぞ宜しくお願いいたします。

 

先生のご専門は何ですか?

弁護士あるあるだと思うのですが,弁護士は,初めてお会いした方から,標題の質問をされることが少なくありません。

それに対して,(多くの)弁護士は「何でもやりますよ」,「町弁は幅広く法律問題を扱うものです」等と答えるのではないでしょうか。中には「全部が専門ですよ」という(強気じゃなくて,優秀な)先生もいらっしゃるかもしれません。かくいう私も,基本的に同様なお答えをしております。

しかし,おそらくこの答えは,質問者が求めている答えではないと思います。この質問をする方は,たとえば,医師であれば,内科,外科,整形外科,産婦人科等々,診療対象(専門)が明確なので,どんな先生かある程度わかるけれど,(多くの)弁護士は何を専門にしているのか(何を中心分野としているのか)わからないと考えておられる可能性が高いからです。

このように考えている方に,「何でもやりますよ」といっても,結局,どんな弁護士なのかわからないなで終わると思うのです。自己の抱えるトラブルに強い弁護士を探すときは,なおさらでしょう。

このように,質問者が求めている答えではないと思いつつも,基本的に「何でもやります」と答えるわけですが,そのように答える理由なり,事情が実はあります。

まず,幅広く事件を扱うために,特定の専門分野を持たないようにしている,というのが理由の一つです。

弁護士毎に,ありたいと思う弁護士像は違うと思いますが,私は,幅広い法律問題を扱える弁護士でありたいと考えております。困っている方から問合せがあったときに,それは自分の専門外だからお答えできません,他の弁護士にご相談下さいと言うことなく,大丈夫ですよ,まずはご相談下さい,といえる弁護士でありたいと思っているのです。そのため,「何でもやります」と答え,幅広い事件を扱うようにしています。

次に,特定の専門分野を持たない方が,弁護士費用を抑えつつ事務所を維持しやすいという事情もあります。

といいますのも,専門的な分野をもてば,その分それ以外の分野の法律問題は扱わないことになるため,扱う事件数が減る可能性・危険性があります。(マーケティング的にはこの考えは必ずしも正しくないでしょうが,都会とも田舎ともいえない,郊外たる柏市周辺を商圏とし,競合する事務所数も少なくない弊事務所の置かれている状況等を踏まえると,その可能性・危険性は高いと考えています。)

そして,少ない事件数で事務所を維持しようとすれば,弁護士費用は高くせざるをえません。たとえば,最近,刑事事件を専門にした法律事務所,その中でもクレプトマニア(窃盗を止めたくても自らの意思では止められないという病気)の刑事事件を専門にする事務所がありますが,事務所によっては,弁護士費用をかなり高めに設定しているようです。(上記事情からすればやむを得ない面があり,もちろん悪いことだとは思いません。)

あくまでも考え方の違いですが,私の置かれている状況で,依頼者に経済的な負担をかけずに事務所を維持していこうとすれば,扱う事件を幅広くした方が望ましいと,私は考えています。これが,「何でもやります」と答えざるを得ない事情です。

もっとも,その分野しか行わないという意味の専門分野はありませんが,私にも多く扱っている分野,案件はございます。現在の私の状況ですと,熟年離婚の案件,遺産分割の案件,兄弟間の遺産の使い込み案件などがこれにあたります。これらは,私がこの分野,案件を扱いたいと思っているから多く扱っているというよりは,たまたまそういう案件が集まったというだけであり,時間とともに,扱う分野や案件は変化すると思います。

ですから,現時点において標題の質問をされたときには,私は,基本的には「何でもやります。」と答えながらも,弁護士としての私をできる限り質問者に伝えるために,次のように答えることになります。

「何でもやりますので,専門分野といえるものはありませんが,現在,離婚事件なら熟年離婚の案件,相続事件なら遺産分割や兄弟間の使い込みが問題となる案件,労働事件なら雇用契約上の地位が問題となる案件を多く扱っています。また,私自身は企業法務に関心があるので,顧問先の案件も丁寧に取り組まさせていただいているところです。」

 

なんか理屈っぽい弁護士だなと思われそうですけれども。