「石塚弁護士ブログ」カテゴリーアーカイブ

離婚と税金1

離婚に関する相談者様やご依頼者様から,税金に関する質問も,まま受けることがあります。

そこで,今回のブログのテーマは離婚と税金にしたいと思います。

1回目は,財産分与で財産の給付を受ける者についての税金問題をお話します。

 

Q1 財産分与により財産をもらった場合,贈与税や所得税を支払わなければならないのですか?

A1 (原則)支払わなくても大丈夫です。

財産分与は,相手方から贈与を受けるのではなく,夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づいて,給付を受けるものであり,贈与又は所得ではありません。

したがって,分与を受けた者は,所得税を支払う必要はありませんし,原則として贈与税も支払う必要はありません。

もっとも,①分与された財産の額が,婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額や,そのほか全ての事情を考慮してもなお多過ぎる場合や,②離婚が贈与税を免れるために行われたと認められる場合には,贈与税がかかることになります。

 

 

Q2 財産分与により不動産を取得した場合,不動産取得税を支払わなければならないのですか?

A2 財産分与が清算的財産分与であるときは,多くの都道府県において不動産取得税を課税しない取り扱いをしていますので,不動産取得税を支払わなくてもいい場合が多いでしょう。

不動産を取得した場合,不動産を取得した者に対して,その不動産の所在する都道府県から不動産取得税が課税されます。

ただし,財産分与により不動産を取得した場合において,その財産分与が清算的財産分与であるときは,多くの都道府県において不動産取得税を課税しない取り扱いがなされています。

 

 

Q3 財産分与により不動産を取得したのですが,その年の固定資産税・都市計画税を支払わなくてはなりませんか?

A3 (財産分与が1月1日になされたのでない限り)支払わなくていいです。

固定資産税は,その不動産の所在する市町村が毎年徴収するものです。都市計画税は,その不動産が都市計画区域内の市街化区域内にある場合に,課税されます。

固定資産税も都市計画税も,毎年1月1日の時点における不動産の所有者に課税され,納税義務者は同時点における不動産の所有者です。

そのため,財産分与によって不動産を所有した者は,(財産分与が1月1日になされたのでない限り)固定資産税・都市計画税の納税義務者ではないので,これらの税金を支払わなくていいことになります。

 

 

Q4 離婚前に財産を分与しても,贈与税はかからないのですか。

A4 離婚前の財産の分与は,贈与になりますので,贈与税はかかります。

財産分与を離婚前にすることはできません。離婚を条件とした贈与であっても,それを離婚前に実行すれば,財産分与ではなく贈与ですので,贈与税はかかってきます。

そのため,離婚前に財産を分与する場合には,贈与税の基礎控除額である110万円を意識する必要が出てくることになります。

離婚のために別居中の児童手当の行方

今回も,離婚についてのブログです。

離婚の関するご相談者様又はご依頼者様からよく質問されることの一つに,児童手当に関する質問がございます。

今回は,この別居中の児童手当についてのお話です。

まずは,前提知識から,

Q1 児童手当とはなんですか。

A1 児童手当とは,児童を養育する家計の負担を軽減し,あわせて児童の健やかな成長に資することを目的として支給される手当のことをいいます。

(受給資格)

児童手当は,中学校3年生(15歳になった日以後の最初の3月31日)までの児童を養育している人に支給されます。

(支給月額)

  • 0歳から3歳未満 (一律)  15,000円
  • 3歳から小学校修了前 (第1子・第2子)  10,000円
  • 3歳から小学校修了前 (第3子以降)  15,000円
  • 中学生 (一律)  10,000円
  • 所得制限限度額以上世帯、児童1人につき  5,000円(※)

(※)児童手当には所得制限がありますので,一定の所得を有する人は,「特例給付」として、児童1人につき、月額5,000円が支給されます。

(支給時期)

2月・6月・10月の各10日(土曜・日曜・祝日の場合はその直前の金融機関営業日)に,それぞれの前月分までの手当が支給されます。

 

Q2 離婚のために別居をしました。今まで児童手当は夫の口座に振込まれることになっていました。別居して子供を養育しているのは自分なので,夫に振込まれる児童手当を自分の口座に振り込まれるようにしたいのですが,できますか?

A2 できます。

実は,よく質問されるというのは,このQ2に関する質問です。

児童手当は,児童を養育する保護者のうち,家計の主たる生計維持者に支払われることになっています。そのため,夫婦二人で子育てをしている場合や,単身赴任を理由に別居している場合には,所得の高い人に支払われます。夫の方が所得が高いことが多いため,多くの家庭では夫名義の口座に振り込まれています。

しかし,離婚準備中などの理由で別居をしている場合には,子供と一緒に住んでいる方に児童手当が支払われるとされています。

そのため,離婚のために別居をしている妻が子育てをしている場合には,児童手当は妻に支払われるべきといえるのです。

 

Q3 Q2の場合に,児童手当の振込先口座を夫から自分(妻)に変更するにはどうしたらいいですか。

A3 妻の住所地の役所に,①「児童手当などの受給資格に係る申立書」と,②「協議離婚申し入れに係る内容証明郵便の謄本・調停期日呼び出し状(写し)・家庭裁判所による係属証明書・調停不成立証明書」のいずれかを提出すれば足ります。

①は各役所に備え付けておりますので,そちらを利用されるといいでしょう。

②についてですが,夫婦関係等調整(離婚)調停を申し立てているときの,調停期日の呼び出し状などを提出することになります。

当職が離婚調停を手続代理している場合,ご依頼者様には,調停申立書の写しを代わりに提出してもらうことが多いです。柏市,松戸市の近隣の役所のみならず福島県郡山市でも同様の対応をしてもらっていましたので,おそらくどこの役所でも②として扱ってくれると思います。

 

Q4 Q3によって,児童手当を受給すると,婚姻費用算定の際の収入に影響がありますか。

A4 ありませんので,安心して児童手当を受給してください。

これは少し応用的知識です。婚姻費用(生活費)を調停ないし審判で決める際,双方の収入が考慮されます。

請求する側の収入が低く,請求される側の収入が高ければ,つまり収入の格差が大きければ多いいほど,認められる婚姻費用は高くなります。

Q4の質問は,離婚準備のために別居中の妻が児童手当を受給することで,その分収入が高くなるとして,認められる婚姻費用が低くなってしまわないか,というものです。

しかし,婚姻費用の収入に児童手当の受給分は考慮しないという扱いをしていますので,安心して,早めにA3の児童手当の受給資格の申立てをしてください。

妻側に立って婚姻費用分担請求調停の手続代理をしている際,児童手当の受給資格の変更をすると,結構な確率で相手方である夫から,児童手当をもらえるようになったのだから,その分婚姻費用を減額してもいいはずだと言われることあるのですが,そのような夫の言い分は通らないのです。

柏市役所で養育費等の法律相談をしました

先日,柏市の養育費等の法律相談をするために,柏市役所内にある,こども部こども福祉課に行ってきました。

弁護士は,弁護士会から,各市が主催する法律相談の担当者として,派遣要請を受けることがあります。私は,千葉県弁護士会松戸支部に所属しておりますので,同支部の管轄する市に派遣されます。

これまでも,野田市の法律相談,鎌ケ谷市の法律相談に派遣されたことがありますが,今回はお膝元の柏市の法律相談,特に養育費を中心とした法律相談に派遣されたわけです。

通常,各市の主催する法律相談の相談時間は30分単位であることが多いのですが,柏市の養育費等の法律相談は60分単位と,長い時間が確保されています。

養育費等の法律相談という相談内容からして,お子さん連れの相談者が多いところ,お子さんを連れての相談だとゆっくり相談ができないと考えて,あえて長めの相談時間を設定しているのかもしれません。相談者,特にお子さんを連れての相談者に優しくて,とてもいいことだと思います。

ただ,当職の一般的な相談時間は30分です。これは,30分あればひと通りの回答をすることができる(はずだ)からです。もちろん,事案によっては,60分以上かかることもありますが,そのような相談は少ないといえます。

そのため,普段どおり相談を受けていたら,どの相談も時間が30分以上余ってしまいました。これは,私が,事務所においても,お子さん連れの相談を可能にしているため,お子さんを連れての相談に慣れているからかもしれません。

どの相談者の方も,「よくわかりました。」とおっしゃっていただきました。事務所外でも相談をするというのは,市民の方々に貢献する機会が増えるということを意味しますので,私としては市の法律相談を大切に考えおり,今後も続けていきたいと思っております。

同期のJ

先日,ある裁判所に向かう途中,同期に会いました。

すれ違った瞬間,あれ?と思い後ろを振り返ると,相手も後ろを振り返っていて,「やっぱり」,「おぉ」という感じ。

優秀な彼女。当初P志望でしたが,お誘いがありJになったと記憶しています。今は育休中だそうで,ベビーカーにかわいい男の子を乗せていました。

なお,ここでいうPとは検察(Prosecutor)のこと。Jとは裁判官(Judge)のことです。因みに弁護士はA(Attorney)ではなくて,B(Bengoshi)と呼びます。Aだと,被疑者、被告人(Accused)と被るからと聞いたことがありますが,本当なのかよくわかりません。ただ,結論として,弁護士はBでいいんじゃないと,どこか抜けた決め方をしたところが,法曹界らしくて妙にしっくりします。

以前から,その裁判所の破産を中心に仕事をされていると聞いていたので,「(当該裁判所に)破産手続を申立てるのに抵抗を感じていたんだけれど,実は3件申立てる予定なんだよねぇ」と話しました。同期に書面を見られるのは,恥ずかしいというか,少し緊張します。実務についてからの成長をチェックされるような気持ちになるからでしょうか。

すると,Jの彼女も,「わかります,わかります,知っている人の事件を担当するとなんか変な感じですよね」と同意してくれ,そして「育休明けは,違う裁判所に行く予定ですから(大丈夫ですよ)。」と笑っていました。

期日があったので,あまり長くお話をすることはできませんでしたが,思いかけず楽しい時間を過ごすことができました。

(調停)離婚後の手続4 子供の氏と戸籍について

調停離婚後の手続の説明も,今回で一区切りです。

とはいえ,今回のお話も調停離婚に限りません。

協議離婚を含めて離婚手続き全般にいえることですので,そのことを念頭に入れてください。

Q 離婚によって復氏したのですが,私が新権を有する子供の氏も離婚によって当然に私と同じ氏になるのでしょうか。

A 新権を有する子の氏であっても,離婚によって当然に自分と同じ氏を名乗らせることはできません。

(調停)離婚後の手続3でもご説明したように,婚姻によって氏を変えた人は,離婚によって婚姻前の氏に戻ることになります(復氏)。

しかし,復氏の効果は,子供には及びません。

したがって,復氏によって,子供の氏と異なる氏になることがあります。

これは親権者であっても同様で,親権者の氏と未成年者の氏とが異なるということもありうるのです。

 

Q2 離婚後も子供と同じ氏を名乗りたいのですが,どうしたらよいですか。

A2 親の氏を子供の氏に合わせるために,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出するか,子供の氏を親の氏に合わせるために,「氏の変更許可の申立」と「入籍手続」をとる方法があります。

親は復氏をしないで,婚姻時の氏を名乗ることもできますが,そのためには,離婚の日から3ヶ月以内に,本籍地又は届出人の所在地の役所に,離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出する必要があります(詳しくは,(調停)離婚後の手続3を参照)。

また,子の氏を親の氏に変更することもできますが,そのためには,氏の変更許可の申立と後に述べる入籍手続をとる必要があります。

いずれの方法が良いのかはケースバイケースでしょうが,手続きの簡便さと,子供への影響を避けるために,親が婚姻時の氏を称する方を選択される方が多いように感じます。

なお,子供の氏を変更する場合においても,就学中の子供に辛い思いをさせないために,学校内では以前の氏のままで呼称してもらうように,学校に配慮してもらうようにお願いする方もいらっしゃいます。

また,子供が小学校から中学校,中学校から高校へと進学するタイミングで,子の氏の変更を申し立てることもあるようです。

 

Q3 離婚後に,親権を有する子の戸籍はそのままなのですか。離婚によって,親権者である私の新しい戸籍に入るのですか。

A3 親が離婚をしても子供の戸籍に影響はありません。そのため,親権者である親の戸籍と親権に服する子供の戸籍とが別になることが生じます。子供を新しい戸籍に入れるには,入籍の手続が必要です。

実はこの質問は,私の経験からして,非常に多いと感じています。

多くの方が,親権者と親権に服する子との戸籍が別になることに違和感を感じられるのでしょう。

また,違う戸籍になること,つまり,元夫(妻)の戸籍のままに子供がいることに不安を感じ,違う戸籍のままだと,相続等で問題が生じないかと心配されるのでしょう。

違う戸籍だからといって,親権の行使や相続に法的な違いはありませんので,そのような心配は無用です。

もっとも,公的機関等に親子関係を証明するために,戸籍謄本を提出することがありますが,その際に,複数の戸籍を用意しなければならないという煩わしさはあるといえます。

このような煩わしさを避けるため,また,別れた夫(妻)の戸籍のままにあるのが嫌だという感情的な理由から,自分の戸籍に子供を入れたいと思う方も少なくないようですが,そのためには,入籍の手続を取る必要があります。

 

Q4 入籍手続はどうしたらいいのですか。

A4 親の氏に合わせるために氏の変更許可の申立をした場合は,氏変更許可の審判書をもって,届け人(15歳未満の子の場合は親権者)の所在地又は本籍地の役所に,入籍届を提出する必要があります。子の氏に合わせるために離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出した場合は,前記役所に,入籍届を提出すれば足ります。

親の氏に合わせるために氏の変更許可の申立をした場合,氏の変更許可のみでは氏の変更の効果は生じず,子が親の戸籍に入籍する手続をとる必要があります。

入籍の手続が完了して氏の変更が完了するわけです。

そのため,入籍手続において,氏変更許可の審判書が必要となります。

これに対して,親が離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出した場合には,氏変更許可の審判書は当然のことながら不要となります。

(調停)離婚後の手続3 婚姻時の氏を名乗る場合

今回も調停離婚後の手続についてご説明します。

もっとも,今回のお話は調停離婚に限りません。

協議離婚を含めて離婚手続き全般にいえることですので,そのことを念頭に入れてください。

 

Q 離婚後も婚姻前の氏(旧姓)ではなく,婚姻時の氏を名乗りたいのですが,どうしたらよいですか。

A 離婚の日から3ヶ月以内に,本籍地又は届出人の所在地の役所に,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出してください。

婚姻時に氏を改めた人が離婚をすると,婚姻前の氏に戻ることになります(復氏)。

しかし,婚姻期間が長いと,婚姻時の氏で活動している期間が長いため,復氏をすると不都合が生じることは少なくありません。

また,お子さんがいらっしゃる場合,離婚を理由にお子さんの氏を当然に変更することはできません。

このことは,お子さんの親権者になる方が復氏する場合も同様です。

そのため,お子さんと同じ氏を名乗るために,婚姻時の氏を名乗りたいと思う方も結構いらっしゃいます。

このように,婚姻時の氏を名乗りたいと思う場合には,離婚の日から「3ヶ月以内に」,本籍地又は届出人の所在地の役所に,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出してください。

離婚届を提出するのと同時に,この離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出されるとよいでしょう。

なお,これが「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」です。柏市で離婚届を取り寄せると,「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」もセットでもらえます(他の市町村も同様の扱いをしているかはわかりませんので,問い合わせをされるとよいでしょう)。

 

 

Q2 離婚後3ヶ月を超えたら,婚姻時の氏を名乗ることはできないのでしょうか。

A2 家庭裁判所に対して,氏の変更許可の申立をすることができます。

前述の離婚のときに称していた氏を称する旨の届は,離婚成立日から3ヶ月以内という期間制限がありますので,3ヶ月を過ぎると,同届け出はできなくなります。

しかしながら,3ヶ月を過ぎたら,婚姻時の氏を名乗る手段が全くなくなるということはありません。

氏の変更許可の申立という手段があります。

そのため,3ヶ月を過ぎた場合には,家庭裁判所に対して,氏の変更許可の申立をすることで,婚姻時の氏を名乗ることができます。

もっとも,氏の変更許可の申立は,申し立てたら当然に氏の変更が認められるわけではありません。

氏の変更について「やむを得ない事由」がなければならないとされています。

復氏した方が婚姻時の氏を名乗るために氏の変更許可の申立をする場合には,やむを得ない事由が認められやすいとは言われておりますが,当然に氏の変更が認められるわけではないので,注意が必要です。

したがいまして,離婚後3ヶ月を経過しても,いつでも氏の変更ができると

思うことなく,できる限り離婚後3ヶ月以内に,離婚のときに称していた氏を称する旨の届を提出するようにしてください。

調停離婚後の手続2 調停離婚成立後の年金分割について

前回の「調停離婚後の手続1 調停離婚成立後の離婚届について」に続いて,今回も調停離婚成立後の手続についてご説明します。今回は,調停離婚成立後の年金分割についてです。

前提として,年金分割の基礎知識から確認しましょう。

Q1 年金分割とはなんですか。

A1 年金分割とは,いわば年金の納付実績を半分に分けることをいいます。

夫(妻)の給料から厚生年金が支払われるため,外形的には夫(妻)が年金を支払っていて,その扶養家族である妻(夫)は年金を支払っていないようにみえます。しかし,そもそも夫(妻)がその年金を支払えたのは,妻(夫)が家事等をしていたからなのであり,その支払っている年金の相当分は,実質的には妻(夫)が支払っていると評価できるので,夫(妻)が支払っていた年金実績を,離婚時に妻(夫)にも分けるよう請求する制度,これが年金分割です。

 

Q2 年金分割にいう,合意分割と3号分割の違いは何ですか。

A2 合意分割は合意によって分割の割合を決める年金分割の方法をいいます。3号分割は合意によらずに,年金分割を求める者の請求のみで,当然に分割の割合が5:5と決まる年金分割の方法をいいます。

合意分割は「合意」で分割の割合を「(上限はありますが)自由に決めることができます」。しかし,3号分割は「一方当事者の請求」で足りるのですが,分割の割合を自由に決めることができず,「当然に分割割合は5:5」に決まります。もっとも,合意分割における分割の割合も殆ど「5:5」で決まることが多いので,その違いはあまりないといえるでしょう。

それぞれの年金分割が認められるための要件は,当ホームページの弁護士が教える離婚について知っておきたい基礎知識中の熟年離婚の項目(https://ishizuka-law.jp/rikon/jukunen/)を参照していただきたいと思います。

ただ,調停離婚で問題となるのは,通常は,合意分割です。3号分割が可能であれば,調停によることなく,分割請求をすれば足りるからです。

年金分割自体の説明は,以上のとおりです。

次に,本題の調停離婚後の年金分割の手続を説明します。

 

Q3 調停で年金分割について合意したのですが,これで手続は終了ですか。

A3 いいえ,年金事務所等で年金分割の請求をして下さい。

調停で年金分割について話し合い,調停調書に年金分割の割合を定めた条項を入れても,これで年金分割の手続が終了したことにはなりません。年金事務所など(厚生年金の手続きを取り扱う役所・機関)で年金分割の請求をして下さい。

 

Q4 年金事務所には,相手方当事者と一緒に行かなくてはいけませんか。

A4 調停調書謄本(調停調書省略謄本)があれば,独りでも大丈夫です。

合意分割の場合は,原則当事者双方が年金事務所等に行かなくてはなりません。しかし,調停で年金分割について話し合い,調停条項に年金分割の割合を定めた場合,調停調書謄本(調停調書省略謄本)があれば,独りで手続をすることができます。

その他に,年金手帳や分割当事者が婚姻関係にあったことを示す戸籍謄本も必要となります。

 

Q5 年金事務所に行くのは,どちらの当事者ですか。

A5 決まりはありませんが,通常は年金分割を請求する者となるでしょう。

年金分割を請求する者が年金事務所に行くので,年金分割を請求する者は,調停成立時に,調停調書謄本(調停調書省略謄本)の交付ないし郵送の手続をとる必要があります。家事事件における調停調書は,判決書謄本とは異なり,当然には交付ないし郵送されませんので,年金分割を請求する者は,自ら交付ないし郵送の手続をとるように注意して下さい。

もっとも,通常は,家庭裁判所の書記官が,交付ないし郵送の手続をしますかと尋ねてくるので,調停調書謄本(調停調書省略謄本)を取得し忘れることは少ないかもしれません。

 

Q6 年金事務所に行くのは,いつでもいいのですか。

A6 年金分割請求は,離婚成立日から2年間の間にする必要があります。もっとも,離婚前の配偶者が死んでしまうと,(離婚成立日から2年経たなくとも,)同人が死亡してから1ヶ月以内に請求しなければなりません。

年金分割請求には2年という時効期間がありますので,間違いなく,離婚が成立してから2年間の間に年金分割請求をする必要があります。

もっとも,離婚前の配偶者が死んでしまうと,離婚から2年を待たずに,死亡から1ヶ月が期限となります。死亡の事実を知らなくても,関係ありません。ですから,2年間の間に年金分割を請求すれば足りると思わずに,離婚が成立したら,すみやかに年金分割請求をして下さい。

調停離婚後の手続1 調停離婚成立後の離婚届について

離婚調停事件を代理するときに,よく質問されることの1つに,離婚調停が成立した後どうしたらいいですか?というものがあります。

当ホームページでは,こちらのページの下段にある,「弁護士が教える離婚について知っておきたい基礎知識」の9つの項目において,離婚に関する事項を,かなり詳しく説明していますが,離婚後の手続については,それほど触れていないので,これからしばらくの間,連載という形で説明していきたいと思います。

今回は,「調停離婚後の手続1 調停離婚成立後の離婚届について」を説明したいと思います。

まず,前提のお話しから。

Q1 離婚調停が成立したとして,離婚が成立するのはいつでしょうか。

A1 合意内容によりますが,通常は調停が成立した日が離婚が成立した日です。

よくある合意内容である,「申立人と相手方は,(相手方の申し出により)本日,調停離婚をする。」と調停調書に定められたなら,離婚調停が成立した日に離婚が成立することになります。その後に,離婚届を届出ることになりますが,それは報告的届出といい,離婚の成立には影響しません。

まれに,調停の場で離婚届を作成した上,「申立人または相手方の一方が責任をもって離婚届を役所に届出る」という合意をした場合には,離婚届を役所に届出して受理されたときに離婚が成立します。

前者によるとき,戸籍に「離婚の調停成立日」と記載されるため,戸籍から調停離婚であるとわかるようになります。それを嫌う場合に,後者の合意をすることもあります。しかし,後者によると,提出義務者が離婚届を届出ないかぎり,離婚が成立しません。そのようなリスクを抱えた合意は望ましくないので,後者の合意をすることは稀といえるでしょう。

したがって,合意内容にはよりますが,実際には,前者の合意が交わされるので,離婚調停が成立した日に離婚が成立するといっていいでしょう。以下も,前者の合意が交わされたことを前提にお話しを進めたいと思います。

 

Q2 調停離婚が成立したら,離婚届を届出なくてもいいのでしょうか。

A2 離婚届を届出なければなりません

しかも,離婚が成立してから10日以内に離婚届を市区町村に届出なければなりません。仮に,10日以内に離婚届を届出なければ,(状況次第では)過料という,金銭的な制裁を科されることもあります。

10日もあれば充分だ,と思われるかもしれませんが,実際には,この期間はかなり短いといえます。

なぜなら,離婚届と一緒に提出する,「調停調書謄本」を手にするのに数日かかるのが一般だからです。調停証書は調停成立後に,裁判所の書記官が作成するので,調停成立時に調停証書謄本を受け取れるわけではありません。そして,調停調書謄本を郵送してもらうときには,郵送にかかる日数分,受取りが遅くなります。

また,離婚届を本籍地のある市区町村に届出れば問題ありませんが,本籍地が遠方にある等の理由から,本籍地以外の近隣の市区町村に届出をする場合,戸籍謄本を提出しなければなりません。この戸籍謄本を離婚後に郵送で取り寄せようとすると,取り寄せるまでの間,離婚届を届出ることができないことになります。

したがって,10日以内という期間は,思っている以上に短いのです。

もっとも,こうした事情は,市区町村の職員もわかっているので,多少遅れても,事情を説明すれば,問題なく受け取ってくれることが多いとは思います。上記に,(状況次第では)と書いたのは,そのためです。

 

Q3 離婚届には,他方の署名や証人の署名が必要なのでしょうか。

A3 調停離婚後に提出する離婚届には,届出をする者の署名のみで足り,他方の署名や証人の署名は不要です。

他方の署名や証人の署名がなくとも,調停調書謄本により,離婚が成立したことが明らかなので,これらの署名は不要なのです。

 

Q4 離婚届は,離婚調停の申立人,相手方,いずれが提出するのですか?

A4 離婚届をいずれが提出するかは,調停調書の記載によります。

具体的には,「申立人と相手方は,本日,調停離婚をする。」と記載された場合には,申立人が届出をし,「申立人と相手方は,本日,相手方の申し出により,調停離婚をする。」と記載された場合には,相手方が届出をすることになります。

ですから,調停調書の内容を取り決めるときには,自分が離婚届を届出る義務を負うのかを意識して取り決める必要があります。

一般には,婚姻時に姓を変えて相手方の戸籍に入った方が離婚届を届出る義務を負うことが多いです。これは,婚姻時に姓を変えて相手方の戸籍に入った者は,離婚後の戸籍として,旧戸籍(例えば,両親の戸籍)か,新戸籍(新たに作成する自分の戸籍)かを選択することができるところ,離婚後の用紙に,その選択結果を記載しなければならないので,婚姻時に姓を変えて相手方の戸籍に入った者が離婚届を記載し,届出た方が,その選択結果を正確に離婚届に反映させることができるからです。相手方に任せてしまうと,自分の選択とは異なる戸籍に入ってしまうおそれがあります。

 

Q5 離婚届を届出る義務を負う者が,離婚届を届けなかった場合,離婚の成立は無効になるのですか。

A5 離婚届を届出なくても,離婚の成立は無効になりません。

前述のように,調停の成立日に離婚は成立しており,離婚届は離婚の成否には影響がありません。離婚届を届出る義務を負う者が離婚届を届出ない場合,他方の者が離婚届を届出ることもできるようになります。

NHKの受信料問題

もう去年のことになるのでしょうか,平成29年12月6日に,受信設備を設置した人はNHKと受信契約を締結しなければならないとする規定,放送法64条1項を合憲とする最高裁判決が出ました。

同判決により,受信設備を設置している人は,NHKから裁判をされれば,受信契約を締結しなければならなくなり,そして,同契約の締結は,判決日からではなく,受信設備を設置した日からとなるため,受信設備を設置した日からの受信料を支払わなければならないことになりました。

そのため,受信設備を設置したのが10年前,20年前なら,10年分,20年分の受信料を請求される恐れが出てきたのです。

同判決によって,NHKが,過去分を含めて,高額な受信料を積極的に請求してくるのではないかと危惧されております。確かに,受信料を払って下さい,支払わないなら,裁判をすることもありますよといわれれば,今までと違い,支払に応じる人も出てくるでしょうから,その可能性は低くないでしょう。

もっとも,本当に10年分,20年分の受信料を支払わなければならないのでしょうか?

答えはノーです。

NHKの受信料の消滅時効期間は5年ですから,5年を超えて受信料を求められた場合には,消滅時効を援用することで,支払わなければならない受信料を減額させることができます。

なお,NHKは,消滅時効期間が5年であることは当然に知っていますが,同期間を超えて,設置日からの受信料を請求してきます。

ですから,10年前,20年前といった,随分前の受信料の支払いを請求されたときには,慌てないで,消滅時効を援用できないか,弁護士に相談して下さい。

 

突然,ブログでNHKの受信料を話題にしたのは,弊事務所においても,まさにNHKから高額な受信料の支払いを求められ,これを時効援用で減額したという事案があったので,一言書き留めておきたいなと思ったからです。

 

千葉家庭裁判所佐倉支部に行って来ました

佐倉支部の新館(地裁・簡裁)

佐倉支部の本館(家裁)

佐倉支部に行ったのは今回が初めてではなく,実は何回も行っています。佐倉支部管轄の事件も意外にあるのです。

佐倉支部は小高い丘の中腹にあるため,電車で行くと,京成線の佐倉駅から坂道をしばらく登らなくてはなりません。

佐倉支部に限らず,裁判所は小高い場所にあることが少なくないんです。(ホームグランドである)松戸支部も小高い場所にありますし,福島県だといわき支部も小高い場所にあります。

城跡や旧日本軍の施設跡地に,裁判所が建てられたことが少なくなかったことが原因ではないかと,勝手に推測しております。

佐倉支部は,佐倉城の城主土井利勝が建てた松林寺や,佐倉城の鎮守麻賀多神社や,旧佐倉藩校(佐倉高等学校)の近くにあるので,「なんか」関係しているのではないかなとか思いながら,いつもテクテク坂を登っております。