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おかげさまで5周年
本年2月1日を持ちまして,弊事務所もおかげさまで5周年を迎えました。
3周年のときもお伝えしましたように、企業による生存率は5年で15%ということですから、弊事務所も15%内に入ることができたということでしょうか。
3周年から5周年を迎えるまでの間、コロナ禍により私たちの経済生活はずいぶんと不安定なものとなりましたので、5周年を無事迎えられたことにつきましては格別な思いがございます。
これもひとえに、柏市およびその周辺にお住まいの市民の皆様と企業様のご厚意によるものと、感謝に堪えません。
東山魁夷先生の「若葉の径」。
澄んだ空気をゆっくり吸って、新緑を眺めながら木漏れ日の径を歩く、
そんな心穏やかな、幸せしかない空気感といいますかイメージを、絵を眺めることで感じてもらえればと思い、相談室に飾っております。
今後も,柏市およびその周辺にお住まいの市民の皆様と企業様に支えていただきながら,良質な法的サービスを提供することで,地元柏市およびその周辺にお住まいの市民の皆様と企業様に貢献していきたいと思います。
6年目も,石塚総合法律事務所をどうぞ宜しくお願いいたします。
改正相続法13 相続による権利の承継と対抗要件主義2(民法第899の2条)
今回は、相続による権利の承継と対抗要件主義2(民法第899の2条)です。
前回にもお伝えしたように、相続による権利の承継についても対抗要件主義が採用されることになりました。
そして、対抗要件主義は預貯金などの債権の相続についても及びますので、自己の法定相続分を超えて債権を相続した者は法定相続分を超えた部分を債務者に対抗するには、対抗要件を備える必要があります。
問題となるのは、ここでいう対抗要件の具体的な方法です。
前提として、債権の譲受人が債務者に自己の債権の取得を対抗するには、債権の「譲渡人」の債務者への通知か、債務者からの承諾が必要であり、債権の「譲受人」の債務者への通知は対抗要件にはならないとされています。債権譲渡について不利益を負う者からの通知によってはじめて債務者は債権譲渡が本当になされたと信じることができるからです。債権譲渡について利益を負う者が自分が譲渡を受けたと述べても債務者は本当かわからないので、譲受人からの通知は対抗要件にはなりません。
このことを理解していただいたうえで、本題となります。
Q1 私と姉の共同相続人となりました。母はYに対する貸付債権200万円を全て私に相続させるとの自筆証書遺言を書いてくれました。自己の法定相続分を超える債権の取得をYに対抗するために、姉からYに対して通知を出してほしいのですが、姉が協力してくれません。どうしたらいいですか。
A1 あなた自身が検認調書の謄本に添附された遺言書の写しを添附して債務者Yに通知をしてください。
上記のとおり、債権譲渡の対抗要件は譲渡人の債務者への通知か、債務者からの承諾となります。そして譲受人からの通知は対抗要件になりません。
しかし、譲渡人にあたる被相続人は死亡しておりますし、その相続人である共同相続人の中には遺言書の作成、内容に疑義を持つ者もおり、共同相続人全員による通知を期待することが困難な場合が少なくありません。
そのため、相続による債権の承継においても債権譲渡の対抗要件をそのまま適用すると、受益相続人は債務者に対する対抗要件を具備することができなくなってしまいます。
そこで、改正相続法は、相続による債権の承継の場合には、受益相続人の通知により対抗要件を具備することを認めることとしつつ、虚偽の通知がされることを防止するために、受益相続人の通知による場合には、その通知の際に、遺言又は遺産分割の内容を明らかにすることを要求することにして、その要件を加重することにしています。
したがいまして、相続により法定相続分を超える債権を取得した受益相続人が対抗要件を具備する方法には、①共同相続人全員(又は遺言執行者)による通知、②受益相続人が遺言又は遺産分割の内容を明らかにしてする通知、③債務者の承諾があることになります。
Q2 受益相続人が遺言(又は遺産分割)の内容を明らかにしてする通知には、どのような書面が考えられるでしょうか。
A2 公正証書遺言であれば、公証人によって作成された遺言書の正本又は謄本、自筆証書遺言であれば、その原本の他、家庭裁判所書記官が作成した検認調書の謄本に添附された遺言書の写しや、自筆証書遺言を保管する法務局の遺言書保管官が発行する遺言書情報証明書等が考えられるとされています。
法定相続分を超える債権を取得したことを明らかにするための書面については、いくつか考えられます。遺言書は上記のものが考えられます。
遺産分割については、遺産分割協議書の原本や公証人作成にかかる正本又は謄本、裁判所書記官作成に係る調停調書や審判所の正本又は謄本等がこれにあたるものと考えられています。
相続による権利の承継と対抗要件主義についてはコチラも参考にしてください。
(改正相続法12 相続による権利の承継と対抗要件主義1(民法第899の2条))
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改正相続法12 相続による権利の承継と対抗要件主義(民法第899の2条)
今回は,改正相続法12 相続による権利の承継と対抗要件主義(民法第899の2条)です。
対抗要件主義というのが理解しにくいと思います。対抗要件主義とは、権利変動を第三者に対して主張するには対抗要件を具備しなければならず、先に対抗要件を具備されてしまうと自己の権利変動を主張することができなくなってしまう考え方のことをいいます。
例えば、不動産の譲渡を例にとりますと、売買の意思表示のみで権利変動は生じますが、不動産の買主が自己の所有権を第三者に対して主張するには登記という対抗要件を備えなければならず、二重譲渡がなされて別の買主が先に登記を備えた場合には所有権の取得を主張することができなくなります。
今回の改正では、この対抗要件主義という考え方を相続による権利承継の局面でも導入することになりました。実務的にはとても大きな改正といえるところでして、今回の改正により相続時に対抗要件を速やかに備える必要が高くなったといえます。
Q1 私と妹が母の共同相続人となりました。母は遺言書で自宅を私に相続させるという遺言書を書いてくれていました。ところが、妹が自己にも相続分があるとして2分の1の持分を第三者に売却してしまいました。私は第三者に対して、遺言書を理由に妹は無権利者であるため売買は無効なので、自分が自宅の所有者であると主張することができますか。
A1 遺言書を理由に妹の売買を無効と主張することはできません。遺言書どおりに自宅を相続したと第三者に対して主張するには登記を備える必要があります。
今回の改正前は、登記という対抗要件を備えなくても、相続による権利取得を第三者に対抗できるというのが判例でした。
しかし、判例については、遺言の有無及び内容を知る手段を有していない相続債権者や被相続人の債務者に不測の損害を与える恐れがあるという批判がありました。また、判例のよると、遺言によって利益を受ける相続人が登記等の対抗要件を積極的に備えようとしないため、実体と登記という公示制度とが一致しない場面が増えてしまい、取引の安全や不動産登記制度という公示制度への信頼が害されるという批判もありました。
そこで、改正相続法では、相続を原因とする権利変動についても、これによって利益を受ける相続人は、登記等の対抗要件を備えなければ法定相続分を超える権利の取得を第三者に取得することができないことにしました。
そのため、遺言書によって権利を受ける相続人は急ぎ対抗要件を備える必要が出てきたことになります。
Q2 上記の例で、登記を備えないと自分の相続分についても第三者に対抗することができないのですか。
A2 いいえ、対抗することができないのは法定相続分を超える部分(上記の例で言えば自己の相続分2分1を超える部分)に限られます。
先の遺言書で利益を受ける相続人は、その遺言がなくても法定相続分に相当する部分は権利を取得するこができるので、当該部分は権利の競合は生じません。権利の競合が生ずるのはあくまでも法定相続分を超える部分です。
したがって、自己の法定相続分については改正前と同様に対抗要件を備えなくても相続による取得を主張できます。
Q3 私と妹が母の共同相続人となりました。母は第三者Yに100万円を貸していたのですが、遺言書でYに対する100万円の貸付債権を私に相続させると書いてくれました。ところが、妹が自己にも相続分があるとしてYに対して50万円を返すよう請求し、Yは妹に50万円を支払ってしまいました。私は第三者Yに対して、遺言書を理由に妹への支払は無効なので、自分に100万円を支払うよう求めることができますか。
A3 いいえ、できません。相続による対抗要件主義は不動産のみならず、債権、動産、有価証券などの対抗要件主義を採用しているもの全般に及ぶため、妹への支払い前に債権取得の対抗要件を備えておく必要があります。
相続による権利の承継に対抗要件主義が要求されるのは不動産に限られません。債権をはじめとする対抗要件主義を採用しているもの全般に及びます。
上記の例では、法定相続分を超える部分(50万円)については、債権についての対抗要件を備える必要があります。
改正相続法11 特別の寄与3(民法第1050条)
今回は,改正相続法11 特別の寄与3(民法第1050条)です。
今回は,特別の寄与の請求の仕方,請求する期限について説明したいと思います。
Q1 私は長年被相続人である夫の母の療養看護に勤めてきました。母が亡くなり、特別の寄与料を請求したいのですが、実際にどう請求したらいいのですか。
A1 特別寄与の請求は、まず相続人との協議で定めることが考えられます。協議が調わないとき、又は協議することができないときには、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができます。
特別の寄与を相続人との話し合いで定めることができるのであれば話し合いで定めることができます。話し合いができない場合には家庭裁判所に調停・審判を申立てることになります。
なお、協議に代わる処分手続は、遺産分割手続と独立して申立てることが可能です。ですので、特別寄与者は、遺産分割に関する事件が家庭裁判所に係属していない場合であっても、家庭裁判所に特別の寄与の額を定めることを請求することができます。
独立して申立てることができるので、別に遺産分割の調停・審判がなされている場合にも当然に特別の寄与を定める事件が併合することにはなりません。併合をするか否かは裁判所の判断によります。
Q2 共同相続人として夫A、夫の弟B(次男),C(三男)がおり、兄弟で法定相続分どおりに相続しました。特別の寄与料は誰にどのような割合で請求したらいいのですか。
A2 特別の寄与料は必ずしも共同相続人全員に請求をする必要がありませんので旦那さんのAに請求しなくても構いません。もっとも、BやCといった共同相続人は法定相続分又は指定相続分に応じて特別寄与料を負担するので、Aが負担をする分をBやCに請求することはできません。
特別の寄与制度は、被相続人の財産の維持又は増加に寄与した特別寄与者に対して、一定の範囲で相続財産を分配するのが実質的公平の理念に適うという趣旨で創設されております。
そのため、特別寄与料は本来は相続財産が負担するべき性質のものです。各相続人は特別寄与者の寄与によって相続財産を相続分に従って承継したのですから、特別寄与料の負担も相続分に応じて負担するべきことになります。
したがって、設問の例であれば、BもCも自己の相続分の3分の1を超えては特別寄与料を負担する必要はないことになります。
Q3 特別寄与料を請求しようと思っていますが、遺産分割で各相続人の相続分が定まってから請求すれば足りますよね。
A3 特別寄与料の請求手続きと遺産分割手続は別です。特別寄与料の請求は、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月」以内及び、「相続開始の時から一年」以内という制限が設けられていますので注意してください。
特別寄与料の請求手続と遺産分割手続とは別個のものです。しかし、特別寄与料の支払義務を負うのか否か、負うとしていくら負うのかがわからないと遺産分割を成立させることがなかなか難しいことが想定されます。そうすると、特別寄与料の請求手続が終了しないとなかなか相続問題が解決しないことになってしまいます。
一方で、特別の寄与をしている場合には、被相続人の死亡の事実を容易に知りうるといえます。
そこで、法律は、特別寄与者が家庭裁判所に協議に代える処分を請求することができる期間として、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月」以内及び、「相続開始の時から一年」以内という制限を設けております。
かかる期間を超えると特別寄与料を請求することができなくなりますから、遺産分割手続の有無にかかわらず特別寄与料は請求しなければならないことに注意をしてください。
特別の寄与についてはコチラも参考にしてください
改正相続法10 特別の寄与2(民法第1050条)
今回は,改正相続法10 特別の寄与2(民法第1050条)です。
前回の特別の寄与制度の要件をもう一度示します。
① 被相続人の親族であること
② 無償で療養看護,その他の労務を提供したこと
③ 被相続人の財産の維持又は増加があること
④ ②と③との因果関係があること
⑤ 特別の寄与と認められること
上記をふまえて本題です。
Q1 私は長年夫の母と同居して母の療養看護に勤めていました。母の共同相続人の弟に特別の寄与料を請求したのですが、弟は私が母から生活費を負担してもらっていたことを理由に、無償で療養看護していたとはいえないとして特別の寄与にあたらないといっては寄与料を支払ってくれません。生活費を負担してもらっていた私は特別の寄与料を請求することはできないのでしょうか。
A1 無償といえるかは個別具体的な事情によりますが、被相続人である夫の母親が要介護状態になる前から同居をして、母親が生活費を負担していたような場合であれば、療養看護後に引き続き生活費を負担してもらっていたとしても無償と判断される可能性は高いと思います。
特別の寄与といえるためには、療養看護が無償であることが必要です。この無償であるか否かについては、当事者の認識や、当該財産給付と労務提供の時期的、量的な対応関係等を考慮して判断されると考えられております。
ですから、被相続人から生活費をもらっていたとしても直ちに有償と判断されるわけではありません。要介護状態になる前からの生活費の負担であれば、その生活費負担は療養看護に向けられて給付されたとは言いづらいので無償と判断される可能性は高いと思います。
また、被相続人から僅かなお金をもらっている場合も、そのお金をもって療養看護の対価とはいいがたいので無償と判断される可能性は高いと思います。
もっとも、共同相続人の弟が療養看護をした者にお礼として金銭を支払っていたような場合には、1050条3項の「一切の事情」にあたるとして、特別の寄与の金額を算定する際に考慮されることになると思います。具体的には、そのお礼の金額は特別の寄与料から控除されるでしょう。
Q2 私は長年夫の母の療養看護に努めました。母の共同相続人の弟に特別の寄与料を請求するとして,特別の寄与料はどのように算定されるのですか。
A2 当事者間で自由に特別の寄与料を定めることができますが,当事者の協議で決まらない場合,家庭裁判所は「寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して」,特別寄与料の額を定めることになります(民法第105条第2項,第3項)。
民法第1050条第3項の「一切の事情」には,相続債務の額,被相続人による遺言の内容,各相続人の遺留分,特別寄与者が生前に受けた利益等が含まれるとされています。
特別寄与料の額の具体的な算定方法については,概ね,寄与分の制度において相続人が被相続人に対する療養看護等の労務の提供をした場合と同様の取り扱いがされることになると考えられます。
療養看護型の寄与分に関する実務の代表的な考え方によれば,寄与分の額は,第三者が同様の療養看護を行った場合における日当額に療養看護の日数を乗じた上で,これに一定の裁量割合(0.5~0.7)を乗じて算定するものとされており,特別寄与料の額の算定にあたってもこのような考え方が参考とされると思われます。
特別の寄与についてはコチラも参考にしてください
改正相続法9 特別の寄与1(民法第1050条)
今回は改正相続法9 特別の寄与1(民法第1050条)です。
改正相続法によって,今回から説明する特別の寄与制度が新設されました。
同制度によって,相続人以外の親族が被相続人に療養看護した場合も,その親族は相続人に療養看護した分(特別の寄与分)のお金を払ってくれと請求することができるようになりました。
相続人による「寄与」とは異なり,相続人ではない者の寄与なので「特別の寄与」というのでしょう。
同制度は,相続人以外の親族の貢献を正当に評価することができるようになったというプラス面はありますが,ともすれば相続問題の終局的解決が長引くというマイナス面もあるように思われ,実務家としては少し複雑な気分になります。
それでは本題です。
Q1 妻は,長年,働いてなかなか世話をしてやれなかった私に代わって,私の母の世話をしてくれていました。母が死亡した今,共同相続人の弟に対して,妻の貢献分を考慮してくれといえないものでしょうか。
A1 奥様は被相続人であるお母様にとって,相続人ではない親族なので,その療養看護が特別の寄与といえれば,弟さんにお金を支払ってくれと請求できます。
被相続人に対して療養看護等の貢献をした者が相続財産から分配を受けることを認める制度としては寄与分の制度があります。(寄与分の制度についての説明はコチラの「寄与分について」を参考にしてください。)
しかし,同制度は相続人にのみ認められた制度であるため,説例のような相続人の配偶者の貢献は同制度では評価できませんでした。
そのため,①準委任契約に基づく報酬・費用償還請求,②準事務管理に基づく費用償還請求,③不当利得返還請求等といった法律構成を使って,相続人以外の者の貢献を保護することが行われていました。
しかし,いずれも問題があり,同貢献に対して十分な保護が図れているとは言えない状況だったのです。
そのため,特別の寄与の制度をつくり,相続人以外の者の療養看護分について相続人に金銭請求をすることができるようになりました。
Q2 夫とは事実婚であり,婚姻届は提出していません。しかし,寝たきりになった夫を長年世話をしたのは私であり,相続人である彼の子供たちではありません。私の療養看護は特別の寄与として認められますよね。
A2 残念ですが,特別の寄与の請求権者は被相続人の親族に限られていますので,事実婚の配偶者は特別の寄与を請求することはできません。
特別の寄与の請求権者は,被相続人の親族(六親等内の血族,配偶者,三親等内の姻族)に限られております(親族とは何かについてはコチラの「法律上の親族」を参考にしてください。)。
特別の寄与制度については国会の審議の過程で,請求権者に事実婚や同性カップルのパートナーも含めるべきではないかと議論がありました。
しかし,例えば事実婚については,事実婚に当たるか否か自体,様々な要素を総合的に考慮して判断する必要があるため,これらも請求権者に含めるとすると,その該当性をめぐって当事者間で主張・立証が繰り返されるなどして相続を巡って紛争が複雑化,長期化する恐れがあるとして,請求権者に含まれないことになりました。
被相続人の親族は,被相続人と一定の人的関係にあるがゆえに,被相続人との間で,療養看護について報酬を与えるといった有償契約を締結することが類型的に困難であるため,特別の寄与制度で救助するというのも理由になっています。
したがって,特別の寄与制度の請求権者は,被相続人を療養看護した者であれば誰でもいいのではなく,あくまでも被相続人の親族に限られます。
Q3 私の妻の父(義父)は,長年,寝たきりになった私の母の医療費や施設入所費を負担してきました。母が死亡した今,義父は共同相続人の弟に対して特別の寄与を主張することができますか。
A3 義父は相続人ではない親族ですが,特別の寄与における寄与行為の態様は被相続人に対する無償の労務の提供に限られており,金銭等出資型の寄与は含まれませんので,特別の寄与を主張することはできません。
相続人の寄与制度における寄与の態様については,①家事従事型(被相続人の事業に関する労務の提供),②金銭等出資型(医療費や施設入所費の負担等),③療養看護型(同居し,家事の援助を行うなどの療養看護),④扶養型(生活費の負担,衣食住の面倒といった扶養),⑤財産管理型(不動産の賃貸管理など)があります。
しかし,相続人以外の親族の特別の寄与制度における寄与の態様については,「無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと」に限られています(無償での家事従事型や無償での療養看護がこれにあたる)。
これは特別の寄与制度は紛争の長期化,複雑化の懸念があるため,認められるべき寄与行為を制限すべきという考えを背景として,無償の役務の提供については特別の寄与を認めるべき必要性が高いのに対して,事業資金の提供などの金銭等出資型については,給付時に返還の要否等を被相続人と取り決めることは比較的容易であるから,特別の寄与を認めるべき必要性は低いという価値判断にもとづいています。
なお,ここで,特別の寄与制度が認められるための要件を明確にしておきましょう。要件は以下のとおりです。
① 被相続人の親族であること
② 無償で療養看護,その他の労務を提供したこと
③ 被相続人の財産の維持又は増加があること
④ ②と③との因果関係があること
⑤ 特別の寄与と認められること
Q2は①,Q3は②の要件に関する質問だったことがわかると思います。
なお,①の要件については,被相続人の親族である事の判断基準時は何時なのかという問題や,②の要件については,無償であるか否かはどのように判断するのか,例えば,被相続人が労務を提供していた者の生活費を負担していた場合も労務と言えるのかという問題があります。
(一応上記の答えは,相続開始時であり,相続開始時に親族ではなかったなら(相続開始時には離婚していた元妻),特別の寄与の請求権者とはなりません。)
(個別具体的事案によりますが,被相続人の要介護状態以前から生活費を負担していたのであれば,療養介護の無償性は認められやすくなるでしょう。)
改正相続法8 遺産の一部分割(民法第907条)
今回は,改正相続法8 遺産の一部分割(民法第907条)です。
Q1 父の遺産は自宅(土地・建物)と預貯金です。共同相続人の弟と自宅の帰属をめぐっては意見が対立していますが,預貯金については法定相続分どおり半分にしようと意見が一致しています。とりあえずお金が必要なので,預貯金のみ遺産分割することができますか。
A1 できます。
遺産分割は,事件の終局的解決のために,裁判外の協議でも調停や審判といった裁判上の手続でも,遺産の全てを対象とすることが多いと思います。
しかし,不動産については誰が相続するのかについて争うが,預貯金については法定相続分で早期に分割してもらいたいなど,争いのない遺産の分割を先行させたいとして一部分割を行うことが有益な場合があります。
従前は法文上一部分割が許容されるか明確でなかったこの一部分割について,改正相続法では一定の場合には可能という規定が設けられることになりました。
なお,家事事件手続法第73条第2項の一部審判として行われる一部分割(残余財産についての審判事件が係属したままに,一部の財産について審判をするのに熟したとして行われる一部分割)とは異なります。今回の改正法が対象としているのは,残余財産は審判事件に係属しない,全部審判としての一部分割です。
Q2 一部分割は常にできるのですか。何か要件はあるのでしょうか。
A2 一部分割は他の共同相続人の利益を害するおそれがない場合にできます。そのため,他の共同相続人の利益を害するおそれがないことが要件となります。
一部分割は,共同相続人に遺産についての処分権限を認めた制度ですが,無制限にできるわけではありません。
他の共同相続人の利益を害するおそれがないことが必要です。
当事者に対する特別受益の内容,代償金の支払による解決の可能性やその資力の有無などの事情を総合して,一部分割をすることにより,最終的に適正な分割を達成しうるという明確な見通しが立たない場合には,他の共同相続人の利益を害するおそれがあるとして,一部分割が認められないことになります。
Q3 遺産分割調停(審判)を申立てる際に,全部分割を求めるのか一部分割を求めるのかを明らかにする必要があるのですか。
A3 全部分割か一部分割を求めるかを明らかにする必要があります。
改正相続法により一部分割の制度が定められたため,申立ての趣旨に求める分割が全部分割なのか一部分割なのかを明らかにすることが必要になりました。
裁判所の用意する書式をみますと,申立書に添付する遺産目録には,全ての遺産を記載した上で,申立ての趣旨欄に分割を求める遺産の範囲を特定して記載するようになりました。
Q4 兄から一部分割調停を申し立てられたのですが,私としては全部の遺産について分割協議をしたいのですが,どうしたらいいですか。
A4 自ら全ての遺産を対象とした遺産分割調停を申し立てるか,残余の遺産を対象とした一部分割の遺産分割調停を申し立てましょう。
一部分割を申し立てられた共同相続人にも,遺産についての処分権限があるのですから,申立人以外の共同相続人が,遺産の全部分割又は当初の申立てとは異なる範囲の一部分割を求めることは可能です。
ただその際には,自分自身で新たな申立てをする必要があります。そして具体的には,当初の申立てと併合して(一緒になって)審理されることになります。
なお,一部分割の申立人が審理の途中で他の遺産の分割を求めたいと思った場合には,申立ての趣旨を拡張します。具体的には,申立ての趣旨変更申立書を裁判所に提出することになります。
ちーべんエコバッグ
ちーべんをご存知ですか?
と聞いておいてなんですが,大多数の方はご存知ないでしょう。
ちーべんとは千葉県弁護士会の公式キャラクターです。
コレです。
悪夢を食べるという獏をモチーフにしたキャラクターで,当会の会員のアイデアをもとに専門家がキャラクター化したものです。
ちーべんはゆるキャラブームが盛り上がってやがて下火になった頃の確か4,5年前に誕生したと記憶しております。認知度は低く,ちーべんと検索してもチーバくんという千葉県公式キャラクターばかり出てきます。
さて,どの委員会が主導しているのかわかりませんが,この度ちーべんのエコバッグを作成したとのことで会員向けに購入のお誘いメールがありました。
こんなものに我々の会費を使いおってという先生方のお叱りの声もあろうかと思いますが,きらいではない私は1枚ゲットしました。
ただ,写真ではお分かりにならないかもしれませんが,とても安っぽい。色々な批判を恐れての低価格(200円也)戦略がアダとなっている気がしてなりません。コンビニエンスストアで買い物するときに利用するにも,500ミリリットルのペットボトルを入れるには憚られるチャチさがあります。グミ用かな。
フジパン本仕込みのプレゼントであるミッフィーちゃんのエコバッグに代わることは難しそうです。これはよくできています。
実は,ちーべんくんのぬいぐるみもあり,よく弁護士会の受付に鎮座しております。相談中に小さなお子様の相手をしてもらおうと,ちーべんくんのぬいぐるみが欲しいと思ったこともあるのですが,これは非売品のようで手にすることはできないとのことでした,残念。
このエコバッグ何にも使えないなぁとしげしげ見ているうちに,こんなことをしているのは当会,千葉県弁護士会だけなんだろうか,ほかの単位会でも公式キャラクターってあるのかなと疑問に思うようになりました。
で,調べてみましたら,いろいろでてきました。
秋田県弁護士会は,「ききーぬ」
群馬弁護士会(のADRのイメージキャラクター)は,「スパットくん」
埼玉弁護士会は,「・・・(名前がまだ非発表)」
神奈川県弁護士会は,「みみん」と「るるん」
静岡県弁護士会は,「しずべんちゃん」
新潟県弁護士会は,「まもルン」 まもルンの子供の(?)「ハピ」と「ララ」
福井弁護士会は,「福ロウ」
滋賀弁護士会は,「ナヤマズン」
愛知県弁護士会は,旧キャラ(?)が「聞之介」,新キャラ(?)が「ひまるん」
京都弁護士会(の広報委員会のキャラクター)は,「京幸平」と「日向葵」
(可視化実現本部キャラクター)は,「カシカシカ」
奈良弁護士会は,「こまちゃん」
和歌山弁護士会は,「ほぅえーる」
兵庫県弁護士会は,「ヒマリオン」
広島弁護士会は,「カープローヤー」
岡山弁護士会は,「たすっぴ」
山口県弁護士会は,「ふくえる」
鳥取県弁護士会は,「まさこ先生」
大分県弁護士会(の法律相談センターのマスコットキャラクター)は,「ふくろん」
佐賀県弁護士会は,「よか丸くん」
熊本弁護士会は,「くまろっポン」
沖縄弁護士会は,「べんごシーサー」
単位会ではありませんが日弁連は,「ジャフバくん」
5年,10年して,そんなことしていたかなぁ?となるのか,他の単位会からニューカマーが現れるのか,注意して見守りたいと思います。