石塚弁護士ブログ

改正相続法13 相続による権利の承継と対抗要件主義2(民法第899の2条)

今回は、相続による権利の承継と対抗要件主義2(民法第899の2条)です。

 

前回にもお伝えしたように、相続による権利の承継についても対抗要件主義が採用されることになりました。

そして、対抗要件主義は預貯金などの債権の相続についても及びますので、自己の法定相続分を超えて債権を相続した者は法定相続分を超えた部分を債務者に対抗するには、対抗要件を備える必要があります。

問題となるのは、ここでいう対抗要件の具体的な方法です。

前提として、債権の譲受人が債務者に自己の債権の取得を対抗するには、債権の「譲渡人」の債務者への通知か、債務者からの承諾が必要であり、債権の「譲受人」の債務者への通知は対抗要件にはならないとされています。債権譲渡について不利益を負う者からの通知によってはじめて債務者は債権譲渡が本当になされたと信じることができるからです。債権譲渡について利益を負う者が自分が譲渡を受けたと述べても債務者は本当かわからないので、譲受人からの通知は対抗要件にはなりません。

 

このことを理解していただいたうえで、本題となります。

 

Q1 私と姉の共同相続人となりました。母はYに対する貸付債権200万円を全て私に相続させるとの自筆証書遺言を書いてくれました。自己の法定相続分を超える債権の取得をYに対抗するために、姉からYに対して通知を出してほしいのですが、姉が協力してくれません。どうしたらいいですか。

A1 あなた自身が検認調書の謄本に添附された遺言書の写しを添附して債務者Yに通知をしてください。

上記のとおり、債権譲渡の対抗要件は譲渡人の債務者への通知か、債務者からの承諾となります。そして譲受人からの通知は対抗要件になりません。

しかし、譲渡人にあたる被相続人は死亡しておりますし、その相続人である共同相続人の中には遺言書の作成、内容に疑義を持つ者もおり、共同相続人全員による通知を期待することが困難な場合が少なくありません。

そのため、相続による債権の承継においても債権譲渡の対抗要件をそのまま適用すると、受益相続人は債務者に対する対抗要件を具備することができなくなってしまいます。

そこで、改正相続法は、相続による債権の承継の場合には、受益相続人の通知により対抗要件を具備することを認めることとしつつ、虚偽の通知がされることを防止するために、受益相続人の通知による場合には、その通知の際に、遺言又は遺産分割の内容を明らかにすることを要求することにして、その要件を加重することにしています。

したがいまして、相続により法定相続分を超える債権を取得した受益相続人が対抗要件を具備する方法には、①共同相続人全員(又は遺言執行者)による通知、②受益相続人が遺言又は遺産分割の内容を明らかにしてする通知、③債務者の承諾があることになります。

 

Q2 受益相続人が遺言(又は遺産分割)の内容を明らかにしてする通知には、どのような書面が考えられるでしょうか。

A2 公正証書遺言であれば、公証人によって作成された遺言書の正本又は謄本、自筆証書遺言であれば、その原本の他、家庭裁判所書記官が作成した検認調書の謄本に添附された遺言書の写しや、自筆証書遺言を保管する法務局の遺言書保管官が発行する遺言書情報証明書等が考えられるとされています。

法定相続分を超える債権を取得したことを明らかにするための書面については、いくつか考えられます。遺言書は上記のものが考えられます。

遺産分割については、遺産分割協議書の原本や公証人作成にかかる正本又は謄本、裁判所書記官作成に係る調停調書や審判所の正本又は謄本等がこれにあたるものと考えられています。

相続による権利の承継と対抗要件主義についてはコチラも参考にしてください。

(改正相続法12 相続による権利の承継と対抗要件主義1(民法第899の2条))

 

この記事を書いた人

弁護士 石塚 政人
千葉県柏市出身
2017年 千葉県柏市に石塚総合法律事務所開所

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