遺産分割について

遺産分割について

こんなお悩みありませんか?

  • 兄妹どおしで話し合ったが,遺産分割協議がまとまらない。今後,どうすればよいですか。
  • 行方不明の兄弟がいるのですが,どうやって遺産分割協議をすればよいですか。
  • 遺産分割協議書をどのように作成すればよいのかを知りたい。

相続人が納得のいく遺産分割をしましょう

相続の揉め事の多くは,遺産分割協議という形で現れるのが一般です。
ある意味,相続事件の躓きの石が遺産分割協議をいえるでしょう。
遺産分割協議は,財産がかかわるので,相続人の間で利害対立が先鋭化しやすいのと,正確な法律知識が必要なことが原因だと思います。
ですから,遺産分割で躓いてしまった方,スムーズで納得のいく遺産分割を希望されている方は,一度,弁護士にご相談ください。

弁護士が解説する遺産分割

遺産分割とは

遺産分割とは,相続人間の協議または家庭裁判所の関与によって,遺産をどのように分けるかを決定する手続のことです。

遺産分割の手続き

  1. 指定分割
    (1)被相続人は,遺言で遺産分割の方法を指定することができます(民法908条)。
    特定の財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言についても,特段の事情のない限り,ここでいう遺産分割方法の指定であるとするのが,判例です。
    そのため,特定の財産について「相続させる」旨の遺言がなされているときには,直ちに当該相続人に相続により所有権が帰属することになるため,遺産分割の対象となる遺産ではなくなります。
    (2)また,被相続人は,相続開始の時から5年を超えない期間を定めて,遺産の分割を禁ずることができます。
  2. 協議分割(遺産分割協議)
    (1)被相続人の遺言による,遺産分割方法の指定又は遺産分割の禁止がなければ,共同相続人は,協議によっていつでも遺産の分割をすることができます。
    (2)遺言執行者がいない場合,相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む。)の同意があれば,遺言と異なる遺産分割をすることも可能と考えられています。
    (3)しかし,遺言執行者がいる場合には,相続人は,遺産に対する管理処分権を喪失し(民法1013条),遺言執行者が管理処分権を有しますので(民法1012条1項),遺言執行者は,相続人全員の合意の下に遺言内容と異なる財産処分を求められても,遺言に基づいた執行をなすことができます。
    もっとも,利害関係人(相続人,受遺者)全員が遺言と異なる遺産分割を行うことを望んだ場合に,遺言執行者がこれに同意することは可能です。
  3. 調停分割
    (1)共同相続人間で遺産分割協議が調わない場合,又は,協議をすることができない場合には,各共同相続人は,家庭裁判所にその分割を請求することができます。
    調停分割は,調停手続を利用した話し合いで,遺産を分割する方法です。
    (2)遺産分割事件は,審判の申立て(審判分割),調停の申立てのいずれの手続を申し立てることが可能です。
    しかし,画一的な判断しかできない審判分割よりも,柔軟で,共同相続人の意向をふまえた分割が可能な調停分割の方が望ましい等の判断から,調停を申立てることが多いですし,仮に,審判を申立ても,裁判所から職権で,調停に付されることが多いです。
    (3)調停分割では,当事者どおしが協議するのではなく,中立公平な調停委員を介して協議するので,感情的にならずに,事件を解決することが出来るというメリットがあります。
  4. 審判分割
    (1)審判分割は,調停が不成立になった場合等に,家事審判官が決定する分割方法です。
    (2)審判分割は,調停分割と異なり,話し合いではなく,家事審判官が職権で事実の調査及び証拠調べを行う等して,民法906条の分割基準に従って,各相続人の相続分に反しないように分割を実行します。
    民法906条の分割基準に従うので,柔軟な解決とはいえない場合もあるところがデメリットです。

 

遺産分割の方法(分け方)

現物分割
1.現物分割とは,遺産たる現物をそのまま配分する方法で,遺産分割の原則的方法です。
2.現物分割は,各遺産を分配して相続人単独で所有させることが通常です。
たとえば,土地は長男に,預貯金は次男に,株式は長女にというわけ方がなされます。
3.もっとも,分割を段階的に行う必要のある場合や,共同相続人がいくつかのグループに分かれて争っているが,各グループ内部では対立がなくまとまっている場合等には,遺産の一部を,相続人中の数人ないし全員の共有とする方法による分割(共有分割)が行われることもあります。
例えば,土地につき,長男と次男の2分の1持分での共有とし,預貯金は長女,株式は二女にという分け方もあるわけです。
なお,遺産分割後の共有状態は,民法上の共有に関する規定によるため,その解消は,民法上の共有の規定に従うことになります。
代償分割
1.代償分割とは,現物を特定の者が取得し,取得者は他の相続人にその具体的相続分に応じた金銭等を支払う方法です。
例えば,分割が困難だったり適さないような建物を長男に相続させ,代わりに,相続分以上の遺産を取得した長男が,次男に対し,相続分を超える部分を現金で支払うという分け方です。
2.審判分割においては,代償分割の方法を採るには「特別の事情があると認め」られる場合でなければなりませんが,協議分割においてはこのような制約はありません。
換価分割
1.換価分割とは,遺産の中の個々の財産を売却し,その代金を配分する方法をいいます。
2.換価分割は,現物分割や代償分割によることが困難若しくは相当でない場合に採られる分割方法ですが,協議分割による分割の場合には,このような事由がなくても相続人全員の同意の下になし得ます。

遺産分割の流れ

  1. 遺言書で指定分割の確認をする
    (1)前述のとおり,被相続人も遺言書によって遺産分割方法を指定することができます。
    (2)そのため,遺言書に,遺産分割協議の禁止が定められていないか,遺産分割方法の指定がなされ,そして,遺言執行者が指定されていないかを確認します。
    (3)上記確認のもと,協議分割ができることを確認したら,次の相続人の調査に進みます。
  2. 相続人の調査をする
    (1)遺産分割協議は,法定相続人全員で協議する必要があります。
    (2)そこで,被相続人及び全相続人の出生してから死亡するまでの戸籍謄本(原戸籍,除斥簿を含む)全てを取り寄せて,法定相続人を確定する必要があります。
  3. 遺産の調査をする
    (1)被相続人との同居の有無,付き合いの程度いかんによっては,被相続人の遺産を正確に把握していない方は少なくないでしょう。
    (2)遺産分割の対象となる財産を洩らしてしまうことのないように,遺産を正確に調査しましょう。

    ① まずは,被相続人の同居人等財産を管理していて者への聞き取りをしましょう。
    ② つぎに,預貯金であれば通帳を確認したり,通帳がない場合には取引履歴を開示する手続をしましょう。
    通帳の記録,取引履歴は,被相続人の財産の動きや負債を知るのに,とても有効な情報となります。
    ③ また,郵便物から遺産や負債の状況を確認しましょう。
    有価証券がある場合には,証券会社から報告書が届くことが多いですし,未払いのカードローンがある場合には,督促状などが届くことがあります。
    ④ 不動産がある場合は,登記事項証明書を取り寄せて,不動産の権利関係を調べましょう。
    また,固定資産税評価証明書を取り寄せて,不動産の評価額を把握しましょう。
    ⑤ さらに,相続人も把握していない不動産があるかもしれませんので,市区町村で,固定資産課税台帳(名寄せ帳)を取り寄せましょう。
    名寄せ帳には,被相続人が,当該市町村に所有している土地・建物が記載されております。

  4. 協議分割をする
    (1)相続人全員と調査した遺産について,現物分割,代償分割,換価分割の方法をもって,分割協議をします。
    (2)遺産分割請求権は消滅時効に掛からないので,各相続人は,遺産分割の禁止がないかぎり,いつでも分割を請求することができます。
    もっとも,遺産を構成する個々の財産に取得時効が完成することがあり得ますし,当事者や遺産に変動が生じ,権利関係が複雑になる危険があるため,早期に協議分割をすることが望ましいでしょう。
    (3)協議は,共同相続人が一同に会して話し合うのが望ましいですが,共同相続人の数が多い場合や,相互に遠隔の地にあり全員が集まるのが困難な場合などには,電話や手紙などの通信手段を使って協議することが多いです。
  5. 遺産分割協議書の作成
    遺産分割協議が成立した場合には,協議の内容を証明するため,また,協議の蒸し返しを防ぐために,遺産分割協議書を作成します。

  6. 遺産分割協議後の手続
    (1)遺産分割協議に従って,各遺産の名義変更手続をすることになります。
    (2)不動産については,「相続」又は「遺産分割」を原因とする所有権移転登記をすることになります。
    (3)預貯金については,遺産分割をした場合は,相続開始時に遡って,遺産分割協議に基づいて各相続人に移転しますので,名義書換え又は払い戻しに必要な書類(遺産分割協議書,戸籍謄本等)をもって,名義書換え又は払戻をして下さい。
    (4)株式については相続開始と共に相続人全員の準共有となるため,遺産分割協議書に基づいて名義変更する必要があります。
  7. (*協議分割が成立しない場合)
    5’調停分割をする
    共同相続人間で協議分割ができない場合には,各共同相続人は,家庭裁判所にその分割を請求します。
    6’審判分割
    調停分割において,調停が成立しない場合,家事審判官が遺産分割方法を決定します。

特別受益について

  1. 特別受益とは
    (1)特別受益とは,被相続人から共同相続人の特定の者に対する,①遺贈,②婚姻や養子縁組のための生前贈与,③生計の資本としての生前贈与をいいます。
    (2)生計の資本としての生前贈与については,生計の基礎として役立つような贈与が広く含まれ,相当額の贈与であれば広く該当するとされています。
    具体的には,会社立上げ資金,高等学校の学資の贈与,自宅の建築資金の贈与などが該当するとされています。
  2. 特別受益がある場合の処理
    相続開始時に有していた積極財産(債務を控除しないもの)の額に,相続人が受けた贈与の額を加算して「みなし相続財産」を想定し,これを各共同相続人の相続分を乗じて,各相続人の相続分を算定し,特別受益を受けた者に対しては,この額から特別受益分を控除し,その残額をもって特別受益者が現実に受くべき相続分とします。
  3. 持戻免除について
    (1)特別受益制度の趣旨は,相続人間の公平を図ることと,それが被相続人の意思に合致するところにあります。
    (2)したがって,被相続人が持戻しを免除する,すなわち,特定の相続人に対する贈与は別枠で利益を与える旨の意思を有していた場合には,他の相続人の遺留分を侵害しない範囲で,その意思による遺産分割を認めています。

寄与分について

  1. 寄与分とは
    寄与分とは,共同相続人中に,被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときに,他の相続人との間の衡平を図るため,相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し,その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって,その者に相続財産のうちから相続分以上の財産を取得させる制度です。
  2. 寄与分の要件
    (1)寄与分の要件は,
    ①被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養監護その他の方法による寄与行為をすること
    ②その結果,被相続人の財産の維持又は増加があったこと
    ③寄与行為が特別の寄与行為であること
    です。
    (2)③の特別の寄与行為とは,身分関係において通常期待される程度を超える貢献をいいます。
    したがって,夫婦間の協力扶助義務や親族間の扶養義務といった法律上の義務を履行しただけでは足りませんし,寄与者が被相続人から相当の対価を得ている場合には,それによって決済済ですから寄与とは認められません。

  3. 寄与分の算定方法
    (1)寄与分の算定については,寄与の時期,方法,及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮すべきであるとされています。
    (2)なお,寄与分より遺贈が優先されるため,寄与分は,被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。
  4. 具体例
    (1)教員をしながら,妻と共に21年間にわたり家業の農業を手伝い支えてきた長男について,同人の協力がなければ農業の維持は不可能であったばかりでなく,農地を手放さざるを得なかったとして,寄与分割合を遺産総額の20%と認めた事例があります。
    (2)高血圧と心臓病の悪化により寝たきりとなった被相続人を,相続人である長男の妻がつきっきりでおおむね28ヶ月看護したケースにつき,被相続人の死亡直前の6ヵ月を月額9万円程度,その余の22ヶ月を月額3万円程度が通常の扶助を越える部分と評価し,寄与分の価格を相続開始時において120万円と評価した事例があります。

遺産分割の注意点

相続人が未成年の場合の遺産分割

  1. 法定代理人が相続人でなく,かつ,未成年者が一人の場合
    (1)未成年者は行為能力を制限され,単独で法律行為をすることはできず,法律行為をするには法定代理人に代理してもらうか,法定代理人の同意が必要です。
    (2)遺産分割協議も法律行為ですので,未成年者は単独では行為できませんから,法定代理人が相続人でなく,かつ,相続人に未成年者が一人いる場合,親権者などの法定代理人が未成年者に代わって遺産分割協議を行うことになります。
  2. 法定代理人も相続人である場合
    (1)未成年者のみならず,親権者などの法定代理人も相続人である場合は,少し複雑になり,相続人である親権者などの法定代理人は,未成年者に代わって,遺産分割協議を行うことはできません。
    なぜなら,このような場合には,未成年者と親権者などの法定代理人の利益が相反しているからです。
    簡単にいえば,このような場合に,親権者などの法定代理人に未成年者の代理を認めてしまうと,親権者などの法定代理人は,自己の相続分を多くする為に,未成年者の相続分を少なくする内容の遺産分割協議をしてしまいおそれがあるので,それはできないようにしているのです。
    (2)そこで,このように,法定代理人も相続人である場合には,未成年者のために,未成年者を代理してくれる,特別代理人を選任してもらうように,家庭裁判所に請求する必要があります。
  3. 法定相続人たる未成年者が複数いる場合
    (1)親権者などの法定代理人は相続人ではないが,法定相続人たる未成年者が複数いる場合も,法定代理人は,未成年者たる複数の子を代理して,未成年者らの為に,未成年者に代わって遺産分割協議を行うことはできません。
    なぜなら,このような場合,親権者と未成年者らとの間は利益は相反しませんが,未成年者らの間では利益が相反するからです。
    未成年者Aの為に,未成年者Bの相続分を少なくする内容の遺産分割協議をすることを許せば,未成年者Bの利益が損なわれてしまうので,それはできないようにしているのです。
    (2)そこで,このように,法定相続人たる未成年者が複数いる場合も,未成年者の為に,未成年者を代理してくれる,特別代理人を選任してもらうように,家庭裁判所に請求する必要があります。
    これにより,親権者たる法定代理人は未成年者Aに代わって遺産分割協議を行い,特別代理人が未成年者Bに代わって遺産分割協議を行うことになります。

行方不明の相続人がいる場合の遺産分割

  1. 行方不明の相続人がいる場合
    (1)共同相続人中に,生存は明らかだが,行方不明の相続人(不在者)がいる場合であっても,この不在者を遺産分割協議から除くことはできません。
    (2)そこで,行方不明の相続人がいる場合には,その不在者の財産を管理する不在者財産管理人を選任して,その管理人と遺産分割協議をする必要があります。
    (3)不在者財産管理人選任の要件は,
    ①不在者が②財産管理人を置かなかったときに,③利害関係人(共同相続人など)又は検察官が財産管理人の選任を家庭裁判所に請求することです。
    (4)なお,不在者財産管理人の権限は,保存行為及び性質を変えない範囲の利用・改良行為に限られており,その権限を越える行為をする場合には家庭裁判所の許可を得る必要がありますので,遺産分割協議を成立させるにあたり,この家庭裁判所の許可を得る必要もあります。

  2. 生死不明の相続人がいる場合
    (1)次に,共同相続人中に,生死不明の,行方不明の相続人(失踪者)がいる場合の遺産分割協議について説明します。
    前記1は行方不明ではあるが生存は明らかな場合であり,今回の場合は,行方不明者がそもそも生存しているのか自体不明な場合です。
    (2)このように,共同相続人中に,生死不明の,行方不明の相続人(失踪者)がいる場合の遺産分割協議においては,失踪宣告制度を利用する必要があります。
    (3)失踪宣告は,不在者の生死不明の状態が続いている場合に,その者の死亡を擬制して,不在者を取り巻く法律関係を確定する制度です。
    (4)失踪宣告が認められるには,普通失踪においては,失踪者の生存を証明できる最後の時から7年間生死不明の状態が継続すれば,失踪宣告をすることができます。
    戦地に臨んだり,沈没した船舶中にいたり,その他死亡の原因となるような危難に遭遇した場合の危難失踪は,危難の去ったときから1年間生死不明の状態が継続すれば,失踪宣告をすることができます。
    (5)失踪宣告が認められれば,普通失踪の場合は失踪者の生存を証明できる最後のときから7年間が経過したとき,又,危難失踪の場合は危難の去ったときに,失踪者は死亡したものとみなされます。
    したがって,仮に,普通失踪の場合で,失踪者の生存を証明できる最後のときから7年間が経過した後に,相続が開始したのであれば,当該失踪者は相続時には死亡していたことになるので,結果的に相続人ではなかったことになり,他の共同相続人間で遺産分割協議をすることができます。

遺産分割協議書の作成

  1. 遺産分割協議所作成の必要性
    遺産分割協議は,共同相続人全員の意思の合致により,遺産を分割する手続です。
    遺産分割協議が成立した場合には,協議の内容を証明するため,また,協議の蒸し返しを防ぐためにも,遺産分割協議書を作成しておくべきです。
  2. 遺産分割協議書作成の注意点
    (1)相続人を正確に把握すること
    遺産分割協議は,法定相続人全員で協議する必要があります。
    そこで,被相続人及び全法定相続人の出生してから死亡するまでの戸籍謄本(原戸籍,除斥簿を含む)全てを取り寄せて,法定相続人を確定する必要があります。
    先妻の子,認知していた愛人の子など,思いもよらなかった相続人が出現することもありますので注意して下さい。
    (2)相続人の氏名・住所
    相続人の氏名・住所は,住民票や印鑑証明書に記載されているとおりに記載をし,同一人であることを担保しておくとよいでしょう。
    (3) 遺産を正確に把握すること
    遺産分割の対象となる財産を洩らしてしまい,再度の遺産分割協議をする必要が生じることのないように,また,協議後に発見された遺産の評価額が高く,協議が不公平だったと,紛争が生じないように,遺産を正確に調査しましょう。
    具体的方法は前記遺産分割の流れを参照して下さい。
    (4)遺産を特定すること
    遺産たる不動産については,登記事項証明書等の記載によって,その他の財産についても他の財産と区別が可能な程度に明確に特定することが大切です。
    (5)自署と実印での捺印
    遺産分割協議書に署名をする場合には,自署によるべきです。
    また,同書に捺印するには実印によるべきであり,各人の印鑑証明書を添付することが望ましいでしょう。
    (6)相続人の人数分作成する
    各相続人が協議書を1通ずつ所持するように,相続人の人数分協議書を作成します。
    (7) 契印をすること
    分割協議書が複数頁にわたる場合には,各用紙の間に全相続人の契印をして,偽造を防止しましょう。
    (8)今後発見された遺産の帰属をフォローする
    遺産の調査をしっかり行っても,遺産が漏れてしまい,協議後に遺産が発見されるということもあります。
    そこで,このような場合に備えて,協議後に発見された遺産について,誰にどのように分配するべきかを,協議書中に定めておくことが望ましいです。

遺産分割の付随問題

使途不明金について

  1. 使途不明金問題は遺産分割手続とは別問題
    (1)遺産分割手続を進める過程において,被相続人名義の預金口座の取引履歴を入手してみると,生前に多額の引出行為がなされていることが判明することがあります。
    これが使途不明金問題です。
    当職の感覚では,この使途不明金問題に悩まれている方は結構いると思います。
    (2)使途不明金を共同相続人の一人が引き出していた場合に,遺産分割調停の中で,使途不明金問題も含めて話し合いをすることはできます。
    しかし,使途不明金を引き出した相続人が,使途不明金を遺産に組み戻すことを拒否して,調停が不成立と成り,審判手続に移行した場合,あくまでも使途不明金は遺産ではないので,審判手続では使途不明金問題は解決しません。

  2. 使途不明金問題を解決するには民事訴訟手続が必要
    (1)使途不明金問題を解決するには,一般的には,不当利得返還請求訴訟あるいは不法行為損害賠償請求訴訟,場合によっては預託金返還請求訴訟を提起することになります。
    (2)同訴訟においては,引出行為者の特定,引出権限の有無,引出金の使途・払戻金の使途などが問題となります。

遺産分割トラブルは弁護士にご相談下さい

  1. そもそも一般の方にとって,被相続人と相続人全員の出生時からの戸籍謄本(原戸籍,除斥簿含む)を取り寄せること自体難しいでしょうし,何が遺産の対象となる財産なのかについても,法律の知識が必要で,あれこれ悩まれることも多いと思います。
    その上で,感情的になっている親族と,どうやって冷静に遺産分割方法について話し合えばいいのか,頭を抱えることも多いのではないでしょうか。
    加えて,使途不明金問題や,祭祀財産問題といった,遺産分割協議に付随する問題もある場合は尚更です。
  2. このように一般の方が適切に処理することが困難な遺産分割事件ですが,一般の方の中には,インターネットからダウンロードした書式を用いて,安易に遺産分割協議書を作成しようとされる方もいます。
    しかし,インターネット上にあふれている書式は,誰が作成したものか定かではありませんし,少なくとも,個々の事案に沿ってつくられたものではありません。
    つまり,あなたにとって最善のオーダーメイドでつくられた遺産分割協議書ではありません。
  3. 遺産分割で問題となる財産は,まとまった財産なので,高額となることが多いです。
    私は,高額で,大切な財産を,誰がつくったのかわからないような遺産分割協議書の書式に委ねてしまうということは,非常に危険であると考えております。
    遺産分割については,まずは,法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめいたします。
    柏市にある石塚総合法律事務所では,あなたにとって最善の遺産分割協議とは何かを一緒に考え,ご提案いたします。
    是非,一度,当事務所にご相談下さい。

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