今回は、改正相続法14 配偶者居住権1です。
配偶者居住権は、相続法の改正により新設された制度です。
配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が被相続人所有の建物に居住していた場合、被相続人死亡後も同建物の居住するなどの使用収益権を認める制度です。
長年連れ添った夫を亡くした妻が、夫死亡後も住み慣れた家で生活をしたいと考えるのは無理からぬことです。改正前では、妻のその思いを実現するためには、妻が家を相続するか、家を相続した相続人と賃貸借契約を結ばなくてはなりませんでした。
しかし、妻が家を相続すると家は高額なことが多いため、夫のその他の遺産(例えば預貯金)を取得することができず、生活に困ってしまうことになりかねません。また、家を相続した人が必ず賃貸借契約を締結してくれるか定かではありません。
そのため、配偶者居住権という居住建物の使用収益権限という権利を創設することになりました。配偶者居住権は、使用収益権限のみであり処分権限がありませんから、その金銭的評価は低くなるため、配偶者が同権利を取得しても、その他の遺産を取得できる場合が多くなります。
Q1 配偶者居住権が認められるための要件はなんですか。
A1 配偶者居住権の成立要件は、①配偶者が相続開始のときに被相続人所有の建物に居住していたこと、②その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、又は死因贈与がなされたことです。
配偶者居住権が認められるには被相続人が所有した建物であることを要しますから、被相続人が賃貸で借りていた建物については配偶者居住権は成立しません。
また、配偶者が相続開始時に入院をして被相続人が所有していた建物で暮らしていなかったとしても、「居住していた」つまり、生活の本拠地としていたと評価できれば配偶者居住権は成立することができます。
Q2 私と亡くなった夫とは籍はいれていない事実婚でしたが、30年も一緒に暮らしていました。内縁の妻である私も配偶者居住権を取得できますか。
A2 配偶者居住権が認められる「配偶者」とは法律婚における配偶者をいい、内縁の配偶者は含まれませんので、内縁の妻は配偶者居住権を取得することはできません。
内縁の配偶者が含まれない理由としては、内縁の配偶者はそもそも相続権を有しないことや、内縁の配偶者も含まれるとすると、当該人物が内縁の配偶者にあたるか否かをめぐって紛争が複雑化、長期化してしてしまいますが、それではいつまでたっても遺産分割協議が終わらないため望ましくないことが挙げられます。
Q3 亡くなった主人の遺産分割協議の結果、私は配偶者居住権を取得しました。ところが、主人の家を相続した息子が第三者Yに勝手に家を売却してしまいました。私は、Yに配偶者居住権を主張して、主人の家に住み続けることができますか。
A3 配偶者居住権をYに主張するためには、配偶者居住権の設定の登記をしなければなりません(第1031条第2項、第605条)。そのため、Yがご主人の建物の所有権移転登記を取得するまえに、配偶者居住権の設定の登記を取得していれば、ご主人の家に住み続けることができます。
配偶者居住権を第三者に対抗するには配偶者居住権の設定の登記が必要となります。なお、建物の賃借権と異なり、居住建物の引渡しは対抗要件とはなりませんので注意が必要です。