石塚弁護士ブログ

改正相続法15 配偶者居住権2

今回は、配偶者居住権2です。

前回は、配偶者居住権の成立要件と対抗要件について説明しました。

今回は、配偶者居住権の権利の内容についてご説明します。

 

 

Q1 私は遺産分割協議により亡くなった夫の建物について配偶者居住権を有することになりました。そのあとに、自分で住む家を借りたので、もう夫の建物に住む必要がなくなりました。配偶者居住権を友人に譲ってもいいでしょうか。

A1 配偶者居住権を譲渡することはできませんので、ご友人に譲渡することはできません。

配偶者居住権は、当該配偶者に一身専属的に帰属する権利ですので、これを第三者に譲渡することはできません(第1032条第2項)。

 

 

Q2 Q1の例で、配偶者居住権を友人に譲渡しないにしても、私の一存で夫の住んでいた建物に友人を住まわせることはできませんか。

A2 旦那さんの建物の所有者の承諾を得なければ、ご友人を住まわせることはできません。

 

配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用又は収益をさせることはできないので、 配偶者の一存で第三者に居住建物の使用を認めることはできません。

もっとも、配偶者以外の第三者が居住することが一切できないわけではありません。あくまでも、配偶者の家族や家事使用人と同居することは当然に予定されているため、たとえば配偶者の妹を住まわせる場合には、居住建物の所有者の承諾はいらないと思われます。

 

 

Q3 夫が亡くなり、夫の建物については息子が相続をし、私が配偶者居住権を取得することになりました。夫の建物も古くなり、雨漏りがするため屋根の一部を補修する必要があります。私の一存で屋根を補修してもいいのでしょうか。

A3 どちらが補修するのかについては、まず配偶者が補修することができ(第1033条第1項)、居住建物の所有者は配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときに修繕をすることができる(同条第2項)とされていますので、屋根の一部の補修は配偶者であるあなたの一存で補修しても構いません。もっとも、補修が必要な事態(雨漏り)になっていることを居住建物の所有者に伝える必要があります。

 

居住建物の修繕について最も利害関係を有しているのは配偶者であることから、第一次的には配偶者に修繕をさせることにし、居住建物の所有者には、配偶者が修繕をしない場合に限り、修繕権が与えられています。

修繕が必要な場合に、居住建物について権利を主張する者(居住建物の所有者等)に、修繕が必要であることを伝えなければならないとされているのは、実際に居住建物に住んでいない所有者に修繕の機会を付与するためです。

なお、配偶者居住権を有する配偶者は居住建物の修繕権は有していますが、居住建物を増改築(建て増し、建て替え、移築、大規模なリフォームなど)をする場合には、居住建物の所有者の承諾を得なければなりません(第1032条第3項)。増改築と修繕の違いについては、微妙なケースがありますので注意が必要です。

 

 

Q4 Q3の例で、屋根の補修をした場合、屋根の補修代は私と息子のどちらが負担するべきなのでしょうか。

A4 配偶者は居住建物について、通常の必要費を負担することになります(第1033条第1項)。屋根の一部の補修代は通常の必要費といえると思いますので、配偶者であるあなたが負担をするべきでしょう。

配偶者は、ただで物を借りている使用借主と同様の立場にあると考えられていることから、居住建物についての通常の必要費は配偶者が負担するべきとされています。

屋根の一部の補修代は、居住建物のの保存に必要な修繕費ですので、通常の必要費にあたると考えられるため、屋根の一部の補修代は配偶者が負担するべき、ということになります。

 

 

Q5 Q3の例で、居住建物にかかる固定資産税は、私と息子のどちらが支払うべきなのでしょうか。

A5 居住建物の固定資産税の納税義務者は息子さんですが、固定資産税の負担を負うのは配偶者であるあなたということになります。

固定資産税の納税義務者は固定資産の所有者とされている以上、配偶者居住権が設定されているとしても、居住建物の固定資産税の納税義務者は居住建物の所有者です(上記の具定例でいう「息子」)。

しかし、配偶者は通常の必要費を負担するべきとされているところ、この通常の必要費については居住建物やその敷地の固定資産税等が含まれるとされているから、結果として、居住建物の固定資産税は配偶者が負担するべきことになります。

そこで、居住建物の所有者は納税義務者として固定資産税を支払うことになりますが、その固定資産税は配偶者が負担をするべきものなので、固定資産税を支払った後に、配偶者に対して納付した分を支払えと求償することができるとされています。

 

配偶者居住権についてのその他の説明についてはコチラも参考にしてください。

改正相続法14 配偶者居住権1

 

 

この記事を書いた人

弁護士 石塚 政人
千葉県柏市出身
2017年 千葉県柏市に石塚総合法律事務所開所

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