今回は改正相続法シリーズの第3回目,遺留分侵害請求3(民法第1047条第1項)です。
今回の改正部分を説明するには,遺留分侵害請求の順序の知識が前提として必要となります。
前提知識
遺留分侵害請求の順序は,遺贈→死因贈与→贈与の順番であり,複数の遺贈がなされた場合には,原則として遺贈の価額の割合に応じて遺留分侵害額を負担します(詳しくは,コチラを参照してください)。
それでは本題です。
Q 被相続人の母が死亡し,相続人は私(A)と姉(B)の2人です。母は私に1000万円の預金を遺贈し,第三者(C)に3000万円相当の土地を遺贈しました。複数の遺贈がなされた場合には,原則として遺贈の価額の割合に応じて遺留分侵害額を負担するのですから,私も姉からの遺留分侵害請求に対して応分の負担をしなければいけませんか。
A 受遺者等が相続人であった場合,遺留分侵害額の負担は自己の遺留分を超えた遺贈部分となります。あなたの遺留分は1000万円なので遺留分侵害請求の負担を負うことはありません。
新しい相続法では,受遺者等の遺留分侵害額の負担額は,原則として受遺者等が受け取った遺贈や贈与の目的の価額が上限となりますが,受遺者等が相続人である場合には,その価額からその相続人の遺留分の額を控除した額を上限とすると定められました(民法第1047条第1項)。
受遺者等である相続人も遺留分を有しているのでそれを保護しなければなりませんし,上記取り扱いをしないと遺留分侵害請求の循環が生じてしまい不適切だからです。
なお,上記の例ですと,
A,Bの遺留分=(1000万+3000万)×1/2×1/2=1000万
Bの遺留分侵害額=(1000万+3000万)×1/2×1/2=1000万
Bの遺留分侵害額は1000万ですが,Aも1000万の遺留分を有しているので,Aに対して遺留分侵害請求をすることはできずに,Cに対して全額の負担を求めることになります。
その他の遺留分侵害請求権の改正については以下を参考にしてください。