今回は,改正相続法10 特別の寄与2(民法第1050条)です。
前回の特別の寄与制度の要件をもう一度示します。
① 被相続人の親族であること
② 無償で療養看護,その他の労務を提供したこと
③ 被相続人の財産の維持又は増加があること
④ ②と③との因果関係があること
⑤ 特別の寄与と認められること
上記をふまえて本題です。
Q1 私は長年夫の母と同居して母の療養看護に勤めていました。母の共同相続人の弟に特別の寄与料を請求したのですが、弟は私が母から生活費を負担してもらっていたことを理由に、無償で療養看護していたとはいえないとして特別の寄与にあたらないといっては寄与料を支払ってくれません。生活費を負担してもらっていた私は特別の寄与料を請求することはできないのでしょうか。
A1 無償といえるかは個別具体的な事情によりますが、被相続人である夫の母親が要介護状態になる前から同居をして、母親が生活費を負担していたような場合であれば、療養看護後に引き続き生活費を負担してもらっていたとしても無償と判断される可能性は高いと思います。
特別の寄与といえるためには、療養看護が無償であることが必要です。この無償であるか否かについては、当事者の認識や、当該財産給付と労務提供の時期的、量的な対応関係等を考慮して判断されると考えられております。
ですから、被相続人から生活費をもらっていたとしても直ちに有償と判断されるわけではありません。要介護状態になる前からの生活費の負担であれば、その生活費負担は療養看護に向けられて給付されたとは言いづらいので無償と判断される可能性は高いと思います。
また、被相続人から僅かなお金をもらっている場合も、そのお金をもって療養看護の対価とはいいがたいので無償と判断される可能性は高いと思います。
もっとも、共同相続人の弟が療養看護をした者にお礼として金銭を支払っていたような場合には、1050条3項の「一切の事情」にあたるとして、特別の寄与の金額を算定する際に考慮されることになると思います。具体的には、そのお礼の金額は特別の寄与料から控除されるでしょう。
Q2 私は長年夫の母の療養看護に努めました。母の共同相続人の弟に特別の寄与料を請求するとして,特別の寄与料はどのように算定されるのですか。
A2 当事者間で自由に特別の寄与料を定めることができますが,当事者の協議で決まらない場合,家庭裁判所は「寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して」,特別寄与料の額を定めることになります(民法第105条第2項,第3項)。
民法第1050条第3項の「一切の事情」には,相続債務の額,被相続人による遺言の内容,各相続人の遺留分,特別寄与者が生前に受けた利益等が含まれるとされています。
特別寄与料の額の具体的な算定方法については,概ね,寄与分の制度において相続人が被相続人に対する療養看護等の労務の提供をした場合と同様の取り扱いがされることになると考えられます。
療養看護型の寄与分に関する実務の代表的な考え方によれば,寄与分の額は,第三者が同様の療養看護を行った場合における日当額に療養看護の日数を乗じた上で,これに一定の裁量割合(0.5~0.7)を乗じて算定するものとされており,特別寄与料の額の算定にあたってもこのような考え方が参考とされると思われます。
特別の寄与についてはコチラも参考にしてください