遺言無効確認請求訴訟について

遺言無効確認請求訴訟について

こんなお悩みありませんか?

  • 亡き父の遺言書が出てきたが,筆跡が父親のものとは違うとしか思えない。遺言は無効として争えませんか。
  • 遺言書の日付の頃,母は既に認知症がすすんでいて,とても遺言書を書ける状態になかった。遺言は無効として争えませんか。
  • 遺言書に基づいて既に不動産の登記が受遺者に移転されている。遺言の有効性を争えば,移転登記はなかったことになりますか。

遺言書の効力争う訴訟があります

  1. 実家と畑は農家の跡継ぎである長男の自分に相続させると,生前あれほど言っていた父親の遺言書をみてみると,実家と畑を含めた遺産全てを長女に相続させると書いてあった。
    遺言書の筆跡をよくみると,どうしても父親の字とは思えないし,遺言書が書かれた日付の頃は父親は既に認知症もすすんでいたため,こんな詳細な内容の遺言を書けたとは到底思えない,この遺言書は本当に父親がかいたものなのか,長女が書いたものではないのか。
    遺言者たる父親に聞きたいが,それは適わないし,いったいどうしたらいいのか。
  2. このように,残された遺族の方で,遺言書の効力に関して悩まれる方は決して少なくありません。
  3. 遺言書の効力を争う方法はあります。
    それはいかなるものなのか,自分のケースでも遺言書の効力を争えるのか等,遺言書の効力の争い方について知りたい方は,一度弁護士にご相談下さい。

遺言無効確認請求とは

1 遺言無効確認訴訟とは
(1) 遺言無効確認訴訟とは,遺言の効力を争う訴訟のことをいいます。
(2) 遺言無効確認判決が下されると,その遺言が訴訟当事者間では無効であることが確認されます。
(3) 遺言無効確認訴訟を提起できるのは,すなわち原告となれるのは,遺言の有効性につき法律上の利害関係を有する者です。
具体的には,法定相続人や前遺言の受遺者が原告になれます。
次に,誰を被告とするべきかですが,まず受遺者を被告とします。
そして,受遺者でない他の法定相続人中,原告にならない者がいる場合,この者も被告とすることが可能です。
遺言無効確認判決はあくまでも訴訟当事者間で無効であることが確認されるだけなので,遺言無効確認判決後に訴訟当事者でなかった法定相続人が,遺言の効力は有効であると主張することを防止するには,かかる者も訴訟当事者とする必要があるからです。
(4) 遺言無効の原因としては,自筆証書遺言の場合,①日付・押印などの様式性の欠如,②全文自書か,③遺言能力の有無が問題となることが多いです。
公正証書遺言の場合は,①遺言能力の有無,②口授の要件,③通訳人の通訳による申述が問題となることが多いです。
2 他の訴訟と併合提起することもあります
(1) 遺言に基づいて既に受遺者へ不動産の移転登記がされている場合には,その抹消登記手続請求を遺言無効確認訴訟と併合して提起することがあります。
(2) また,遺言無効確認訴訟を主位的請求として,遺留分減殺請求を予備的請求として,併合提起することがあります。
これは,第1次的には遺言の有効性を争いながら,もし遺言が有効であるとしても自己の遺留分が侵害されているとして,第2次的に遺留分侵害を争う場合です。

弁護士が解説する無効になる遺言書

偽造の遺言書

1 偽造の遺言書は,自書性の要件を欠くため,無効となります。
自筆証書遺言における遺言無効確認訴訟では,遺言者本人の自書であるか,偽造であるかが争われることが少なくありません。
2 自書性の立証方法
(1) 筆跡
自書性の立証については,まず,筆跡自体の類似性による立証が検討されます。
筆跡自体の類似あるいは非類似の立証のためには,私的筆跡鑑定書を書証として提出したり,裁判所に対して鑑定の申出をする方法があります。
もっとも,筆跡鑑定の信用性については疑義をもつ裁判例も多く,私的筆跡鑑定書については全く反対の内容を持つ私的筆跡鑑定書が相手方から提出される場合もあり,自分の望む筆跡鑑定がなされたとしても,安心するべきではありません。
(2) 筆記能力
次に,作成時に筆記能力のなかったことの立証も重要です。
筆記能力の有無は医療記録や介護認定時の書類などによるほか,本来自筆すべき書面を代筆によっていたこと等から立証することになります。
(3) 目撃証言
遺言書作成時の目撃証言は自書性の直接証拠となります。
そのため,作成過程をビデオ撮影してある場合のビデオは有効な証拠となります。
また,作成後に本人が遺言書作成を第三者に伝えた場合の第三者の証言は自書性の間接証拠となります。
(4) 遺言内容の合理性
遺言者の従前の発言や希望との整合性や,遺言者と受遺者,法定相続人との関係性において,遺言内容が合理的か否かは,自書性の有力な証拠方法といえます。

認知症の方が書いた遺言書

1 遺言能力
(1) 遺言能力とは,遺言の内容および当該遺言に基づく法的効果を弁識,判断するに足りる能力とされます。
遺言者が有効な遺言をするには,遺言の際に,遺言能力が必要であり,遺言無能力者の書いた遺言は無効となります。
(2) したがって,認知症の方が遺言書を書いた当時に遺言能力がなかったとされれば,遺言書は無効となります。
2 遺言能力の判断要素
(1) 遺言能力の判断要素としては,「遺言能力の有無は,遺言の内容,遺言者の年齢,病状を含む心身の状況および健康状態とその推移,発病時と遺言時の時間的間隔,遺言時とその前後の言動および健康状態,日頃の遺言についての意向,遺言者と受遺者の関係,前の遺言の有無,前の遺言を変更する動機・事情の有無等遺言者の状況を総合的に見て,遺言の時点で遺言事項を判断する能力があったか否かによって判定すべきである」と判断した判例が参考になります。
(2) かかる判断要素の中でも,まず遺言者作成時の遺言者の心身の状況が問題となります。
したがって,専門医による重度の認知症の診断がある場合には,遺言能力がなかったと判断される可能性が高くなります。
(3) なお,遺言の内容が判断要素であるという意味は,遺言者が問題となっている遺言の内容を理解・判断できたかという観点から遺言能力を判断するということです。
すなわち,遺言の内容が単純であれば病状その他の要素から判断能力が低下していても遺言能力が肯定されやすく,反対に複雑になればなるほど相当程度の遺言能力が必要とされるため,遺言能力は否定されやすくなります。
(4) したがって,認知症の方が書いた遺言が複雑な遺言内容であるときには,遺言書は無効と判断される可能性が高いといえます。

遺言書の撤回の取り消し

1 遺言撤回の自由
遺言者は,生前であれば,原因のいかんを問わず,かつ,いつでも遺言の撤回をすることができます。
2 撤回の方式
遺言の撤回は,遺言の方式に従わなければなりません。
撤回遺言においては,撤回する遺言を特定した上で,これを「撤回する」という明確な文言を記載することが望ましいでしょう。
3 遺言の撤回を更に撤回した場合,原則旧遺言は復活しない
(1) 遺言を撤回する行為自体が撤回され,取り消され,又は効力を生じなくなるに至ったときであっても,一度撤回された遺言の効力は復活しません(民法1025条,非復活主義)。
(2) このような非復活主義が採用されたのは,遺言者が旧遺言を復活させる意思を有していたか否かを遺言者の死亡後において確認するのは困難であり,遺言者が旧遺言を復活させることを希望していたなら,旧遺言と同一内容の遺言をあらためて作成することができたはずである,という考えにもとづきます。
4 遺言の撤回を更に撤回した場合に,例外的に旧遺言が復活する場合
(1) 非復活主義が上述の趣旨にもとづくことから,遺言者が撤回する遺言を更に別の遺言によって撤回した場合において,遺言書の記載に照らし,遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは,当初の遺言の効力が復活することになります。
(2) なお,撤回行為が,詐欺または強迫を理由に取り消された場合にも,旧遺言を復活させる意思は明確であるから,旧遺言は復活します(民法1025条但書)。

日付が記載されていない遺言書

1 遺言は厳格な要式が定められています
遺言作成にあたっては,各方式に定められた要件を全て満たす必要があり,要件を欠く遺言は無効となります。
このように遺言が厳格な要式行為とされているのは,他の法律行為と異なり,その効力が問題とされるのは遺言者の死亡後であり,遺言者の真意を確認する術がないからです。
2 日付の記載のない自筆証書遺言は無効です。
(1) 自筆証書遺言では,遺言書への日付の記載が必要であり,日付の記載のない遺言は無効とされます。
自筆証書遺言に日付の記載が要求されるのは,自筆証書遺言は遺言者が1人で作成し,作成状況についての証人となるべき者が存在しないことが多いため,遺言の成立時期を明確にする必要があるからです。
(2) そのため,「年月日」の記載が必要であり,年月の記載はあるが日の記載がない遺言は無効とされます。
(3) また,「平成29年7月吉日」という記載の仕方では,日の記載がないものとして,やはり遺言は無効とされます。
(4) なお,日付も自書であることを要するため,日付印等を使用した遺言は無効となります。

遺言無効確認請求訴訟の流れ

1 事前に話し合いを持つこともあります
(1) 遺言無効確認訴訟を提起する前に,受遺者に対して遺言書は無効であると思料すること,ついては話し合いによる解決の可能性がないか問合せの通知をすることもあります。
これは,遺言無効確認訴訟で勝訴判決を得ても,その後に遺産分割協議・調停が必要な事案では,紛争解決が長期化するおそれがあるため,話し合いによる解決が図られるのであれば,当事者双方の利益に資することもあるからです。
(2) しかし,遺言を有効と考えている受遺者に対し,遺言が無効であることを前提とした話し合いを向けても,了承しないことが少なくありません。
(3) したがって,遺言の有効性を争う場合の多くは,遺言無効確認訴訟を提起することになります。
2 遺言無効確認訴訟を提起する
(1) 遺言無効確認訴訟を提起するのは,遺言の有効性につき法律上の利害関係を有している者であり,具体的には,法定相続人や前遺言の受遺者などです。
(2) 被告には,受遺者と法定相続人中の原告とならない者を加えることが多いでしょう。
後者を被告とすることは必須ではありませんが,遺言無効確認判決後に後者との関係で遺言の効力を再び争うことのないように,被告としておくべきです。
3 無効原因について争います
(1) 自筆証書遺言の場合は,①日付・押印などの様式性の欠如,②全文自書か,③遺言能力の有無が争われることが多いです。
(2) 公正証書遺言の場合は,①遺言能力の有無,②口授の要件,③通訳人の通訳による申述が争われることが多いです。
4 遺言無効確認判決を得た後
(1) 遺言無効確認判決の効力は,その遺言が当事者間では無効であることが確認されるだけです。
そのため,既に遺言に基づいてなされた処分自体を元に戻すには,以下のように別途訴訟が必要になりますし,法定相続人間で新たに遺産をどう分割するのかという遺産分割協議の問題が生じます。
(2) 所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を提起する
既に受遺者が遺言に基づいて不動産につき所有権移転登記を済ませていた場合,遺言無効確認判決を得ただけでは,かかる所有権移転登記を強制的に抹消することはできません。
そこで,受遺者が所有権移転登記を任意に抹消しない場合には,所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を提起することになります。
なお,実際には,あらためて所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を提起するのは迂遠だとして,遺言無効確認訴訟と併合提起することが多いでしょう。
(3) 不当利得返還請求訴訟を提起する
既に受遺者が遺言に基づいて預金からお金を引き出していた場合で,受遺者が引き出した現金を任意に引き渡さない場合には,不当利得返還請求訴訟を提起することになります。
なお,実際には,あらためて不当利得返還請求訴訟を提起するのは迂遠だとして,遺言無効確認訴訟と併合提起することが多いでしょう。
(4) 遺産分割協議をする
受遺者(被告)が法定相続人である場合には,遺言無効確認判決確定後に遺産分割手続が必要となります。
具体的には,遺産分割調停を先ずは申し立てることになるでしょう。
(5) 相続権不存在確認訴訟
受遺者(被告)が法定相続人である場合で,自筆証書遺言の無効原因が受遺者による偽造であると認定された場合は,当該受遺者は相続人欠格事由(民法891条5号)にあたるとして,相続権不存在確認訴訟をすることが考えられます。

遺言無効が認められた後の分割協議

1 遺言無効確認判決の効果
遺言無効確認判決が下された場合,その遺言は訴訟当事者間では無効となります。
2 遺産分割協議の必要性
(1) 受遺者(被告)が法定相続人である場合には,遺言無効確認判決確定後に遺産分割協議が必要となります。
遺言無効確認判決では,遺言の効力が無効であることが確認されただけであり,遺産を誰にどのように分割するべきかが決まるわけではないからです。
(2) したがって,遺言無効確認判決が下された後,遺産分割調停又は審判を申立てることになります。

遺言無効確認請求訴訟は弁護士にご依頼ください

遺族の方で,遺言書の効力に関して悩まれている方は決して少なくありません。
遺言書の内容から,どうしても遺言者が本当に書いたものとは思えない。
遺言者に間違いないのか聞きたいけれど,それは適わないことだと途方に暮れてしまうのです。
遺言書は遺された遺族を翻弄することがあります。
独りで悩まずに,遺言書の効力に関して疑問に思うことを弁護士に話してみてください。
あなたの力になります。

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